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主要記事

 

平成十一年版

「海上保安白書」から

海上保安庁総務部政務課

 

平成十一年版「海上保安の現況」では、平成十年に実施した業務と現況について記述している。ここでは、海難防止および海洋汚染防止に係る項目の中から、主要項の概要を紹介する。

 

〔海難防止関係〕

 

海難の発生状況

 

平成十年の要救助船舶は、一、七二六隻、一〇五万三、五三四総トンであった。これに伴う遭難者は七、八四〇人で、このうち死亡・行方不明者数は一五七人であった。

(1) 要救助船舶の状況

平成九年に比べると、要救助船舶隻数は、四八隻増加している。年変動が大きい台風および異常気象下の海難を除いた要救助船舶について見ると一、六八○隻で、平成九年に比べ一五隻増加した。

平成十年の台風および異常気象下の海難を除いた要救助船舶について見ると次のとおりである。

用途別では、平成九年に引き続きプレジャーボート等が漁船を抜きワースト1となっている。

海難種類別では、乗揚げ、衝突、機関故障の順となっている。

距岸別では、一二カイリ未満で発生した海難が九一%と大半を占めており、特に港内および三カイリ未満の海難については七九%と依然として高い割合を占めている。

原因別では、見張り不十分、操船不適切、船位不確認等といった運航の過誤によるものが五六%と全体の半数以上を占め、機関取扱不良、火気可燃物取扱不良および積載不良を加えた人為的要因によるものが全体の七三%を占めている。

(2) 死亡・行方不明者の状況

平成十年の要救助船舶乗船者のうち死亡・行方不明者数は、二・〇%に当たる一五七人であり、平成九年に比べ一三人減少した。

 

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海難事故ワースト1のプレジャーボート

(中でもモーターボートが飛び抜けて多い)

 

海難への即応体制の構築

 

(1) 遭難情報の迅速な入手のためのGMDSS体制への完全移行

衛星通信やデジタル通信を用いて遭難情報の迅速な入手と海上安全情報の提供を行うGMDSS(海上における遭難及び安全に関する世界的な制度)の導入が平成四年二月から進められてきた。平成十一年二月一日からは同体制に完全移行され、これに対応した遭難周波数を二十四時間体制で聴守し、遭難警報に即応する体制を整えている。

(2) 漁船「新生丸」衝突・転覆海難事故を受けて

平成十一年一月二十日、漁場から銚子港向け航行中の漁船「新生丸」(総トン数一九トン、六名乗組)と船名等不詳の船舶が、八丈島東方の公海上で衝突し、「新生丸」が間もなく転覆、新生丸の衛星EPIRB(衛星非常用位置指示無線標識)から発射された遭難警報が衛星を介して一回のみ海上保安庁のMCC(業務管理センター)において受信された。

海上保安庁では、巡視船および航空機の発動を指示し捜索救助活動を開始したが、遭難警報は誤発射であり、新生丸と通話中である旨の情報がもたらされ、一旦発動を解除した。しかしながら、その後、依然として新生丸の安否が不明であることなどが判明したことから、本格的な捜索救助活動を再開したものの、結果的には海難への対応が遅れることとなった。

 

 

 

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