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海上保安庁警備救難部 航行安全課長

原喜信(はらよしのぶ)

 

<プロフィル>

昭和三十年生まれ、東京都出身、昭和五十三年東京大学卒業、運輸省入省、東北運輸局企画部長、日本鉄道建設公団民鉄線部業務課長、国際観光振興会サンフランシスコ観光宣伝事業所長などを経て、平成十一年七月から現職

 

―― まず海難件数ワースト1のプレジャーボート等の海難についてお聞かせ下さい。

原 現在、数多くの海難の中でプレジャーボート等の海難だけが増加傾向にあります。隻数の増加や、今年五級も新設された小型船舶操縦士免許の取得者数の増加から、当面は海難の増加が避けられないのではと危惧しています。海洋レジャーの健全な発展を図るため、当庁では、小型船安全協会などの民間組織の設立を推進し、海上安全指導員等による自主的な安全指導体制の整備に努めています。当庁自身も具体的な対策として、マナーを含めた安全対策・事故防止に係るパンフレットを配布し、きめ細かい安全指導を実施しています。

また、事前防止策と並んで緊急時の心構えも重要であり、いざというときに陸上との連絡がとれるように通信手段を確保するとともに防水措置を施し、通話エリアなどを確認しておくことをお奨めします。

―― 対策が難しいとされる外国船舶の海難についてのご見解を。

原 日本近海における大型船舶の海難の相当な割合を外国船舶が占めています。ナホトカ号やダイヤモンドグレース号の事故のような大規模な海難は周辺への影響が大きく、その後の処理にも多くの時間と労力を要します。これらの事故の背景にある原因を詳細に分析し、再発防止に努めていく必要があると思います。また、個人個人が安全に関するしっかりした考えをもっていただくことも重要です。

また外国船の場合は、わが国への寄港が少ないとか、外国の船社を通じて網羅的に指導したりすることが難しい面があります。このため、訪船指導や海難防止の運動についても外国船対策を特に念頭において実施しています。

中でも外国船の日本周辺海域についての情報不足は大きな問題であり、海図の備付けの徹底を図るとか、英語をはじめ数カ国語のパンフレットを配布するなどの対策を実施しております。

―― 二〇〇〇年問題に関する事故防止対策についての取組を。

原 国内海運分野では、既に対策が執られているようですが、不測の事態に備えた対応は必要です。特に大型船や危険物積載船は、輻輳海域で事故が発生すると、周辺に多大な影響を及ぼす可能性があります。また外国船については、十分に対策が執られているかどうかの把握が難しい状況にあります。

このため、事前に当庁から海事関係団体等に文書で、必要な対策を呼びかけるとともに当庁として執る対策を示し、ご理解とご協力をお願いしました。

具体的には、特別警戒期間を設け、対策が不十分な船舶について、同期間中、航路への入航を調整したり、危険物の荷役を不許可等とすることもあることをお知らせしました。

―― 今後の航行安全対策の抱負をお願いします。

原 最近二〇〇〇問題、東海村の原子力事故、新幹線トンネル内の崩落等安全への取組の重要性が改めて注目されています。海の分野では、お蔭さまで海難隻数は全体としては減少していますが、あわや大惨事というような事故も少なくありません。

海難を少しでも減らすため、何故(なぜ)そのような事故が起きたかのかデータを調査分析して、これまで以上に広く航行安全に役立つ情報を皆様に提供し、有効な対策を講じていければと考えています。

(十一月十二日、海上保安庁で、聞き手=村上)

 

 

 

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