データの分析
表1〜3に掲げた年別の各種データについて考察します。ただしこれらのデータは、地方水救会の発足状況が、平成十年十二月三十一日現在九カ所、平成十一年八月三十一日現在二九カ所といわば達成半ばの過渡的なデータですが、傾向は現れています。
(1) 勢力の推移(表1)
地方水救会の増加とともに、救難所、同支所、救助員ともに増加しています。中でも特に救助員は八○%も増加しており、今後さらなる増加が期待できます。地元の方々が、ボランティアとしての海難救助活動に真剣に乗り出した結果だと思います。
(2) 出動回数の推移(表2)
出動回数は平成八、九年に比べ平成十年はおよそ四三%増加しています。救難所が増加し、救助員が増加して守備範囲が拡大したことがその主な要因と考えられます。
(3) 出動勢力の推移(表2)
救難所の救助員、救助船の出動は年とともに増加傾向を示していますが、救難所以外(協力者)の人、船の出動は年とともに減少傾向を示しています。さらに、救難所の増加に伴い地方水救会の守備範囲が拡大したにもかかわらず、総出動勢力は減少しています。統制ある、救助効率のよい救難活動が展開されていると解釈するのが妥当と思われます。
(4) 救助状況(表2)
救助した人命の数は、年により振幅が大きいが、全体的には増加傾向にあります。救助した船舶は平成八、九年に比べ平成十年は六〇%増加しています。
従来救難所の力が行き届かなかった海域で発生していた海難救助が、ここにきて、一気に表に出た結果と思われます。
なお、平成十一年上半期のデータは海難発生の季節的特性もあって、分析が困難ですが、米国沿岸警備隊の「一九九五年捜索救助統計」を参考にして、救助実績値をお金に換算しますと、約四三億円に達します。これを基にした年間救助実績の推測換算値は実に百億円を優に超すものと思われます。
(5) 同地元等からの支援状況(表3)
地元等からの支援は横ばい状態で推移しています。今後地方水救会が地域に浸透するに連れ、地域からの支援が増加するものと思われます。
しかし、今は、救難所の急増に伴い、救難器材の増強整備が急務であり、その資金調達等のため、運輸省、海上保安庁、水産庁の後援ならびに、多数の関係団体の協力を得て、「青い羽根募金」を大々的に展開してきました。結果は昨年比五〇%増でしたが、この大々的な展開の中で閣議にも話題が登場する等、水救会の広報にも大きな効果がありました。
まとめ
従来、本会支部の事務所のほとんどが全国漁業協同組合連合会に置かれ、会長、事務局員ともにほとんどの方が漁業協同組合関係者でしたが、現在、地方水救会の事務所は漁業協同組合連合会、県庁、マリーナ等に置かれ、半数余りの会長が漁業協同組合関係者ですが、その他の会長は、市長、海運会社社長、マリーナ社長、消防関係者等本業がさまざまで、事務局職員もまた県庁OB、海上保安庁OB、漁業協同組合、消防関係者と多彩です。