日本財団 図書館


組織改編進む水救会

(社)日本水難救済会

常務理事 岩西武利(いわにしたけとし)

 

(社)日本水難救済会は、いま大変革期を迎えている。本会は百十余年の歴史の中で、地道に活動を続け、実績を積み重ねてきたが、近年、地方分権の推進、特定非営利活動促進法の成立、海難態様の変化等社会環境、海上環境が変化しており、本会もこれに対応する体制の再構築について関係方面から熱い期待が寄せられてきた。このため、本会では、海上保安庁、日本財団のご支援、ご指導を得ながら地方組織の抜本的改編というかつてない改革を進めている。

 

はじめに

 

日本水難救済会(以下水救会)は、明治二十二年十一月三日に、讃岐琴平の地で「大日本帝国水難救済会」として発会し、以来百十年余りの歴史を持つ、特定公益増進法人です。

 

事業の概要

 

水救会は、海上保安庁、日本財団、日本海事財団等のご指導ご支援を得て「海難救助事業」および「洋上救急事業」の二つの主要事業と、これら事業に付帯して、「救難所員の扶助事業」「功労者の表彰事業」「青い羽根募金事業」「調査研究事業」等を実施しています。

(1) 「海難救助事業」は、沿岸や海浜で遭難した人や船等を救助するボランティアの団体(地方水難救済会=以下地方水救会)に、各種訓練、指導者研修、救難器具の整備、救助出動報奨金の交付等、さまざまな支援を行う事業です。

(2) 「洋上救急事業」は、昭和六十年十月に新たに追加した事業で、わが国の周辺海域にある船内で、緊急に医師の加療が必要な傷病者が発生した場合、本会が医療機関、海上保安機関、船主等と連絡調整をして、医師等を乗せた巡視船や航空機等を現場に派遣し、患者に応急治療を施すとともに、患者を陸上の病院に素早く搬送する事業です。

 

救難所の現状

 

各臨海都道府県単位に置かれている地方水救会または本会支部に、海難発生に備える出動救助拠点となる港湾や漁業協同組合ごとに救難所を配置し、さらにその一部には支所を配置しています。

そしてここには漁業関係者、海洋レジャー関係者等の方々がボランティアの救助員として約四万人が全国で活動しています。海難救助は、荒れ狂う海上で行うことが多く、酷寒の吹雪や暴風雨の中のこともあります。

しかし、救助員の皆さんは、付近海域での海難の発生情報を入手すると、生業を投げ打って直ちに救助に出動します。二〇年、三〇年と長期間救助員を続けている方も多数おられます。

救助船艇は、本会所有のわずか二一隻の他は救助員または救助協力者所有の漁船やプレジャーボート等に頼っています。

 

地方組織の改編強化

 

水救会では、本会の活性化を図るとともに地域に密着した活動が行えるよう、平成九年度から三カ年計画で、本会地方支部を地方公益法人(地方水救会)へ独立させることを推進してきました。

すなわち、地方水救会従来の下部組織ではなく、本会の会員となって事業に参画し、従来どおりの活動を続けて行くことになったわけです。

平成十年三月四日の伊豆地区水救会の独立を皮切りに、現在まで二九カ所の地方水救会が発足しています。

最終的には臨海都道府県すべての三九カ所の地方水救会が出来上がる予定です。

独立推進に踏み切った理由は

(1) 地方水救会を名実ともに地域社会に密着した組織とすること。

(2) 地方水救会を海洋レジャーの進展等新たな状況に対応できるものにすること。

(3) 本会および地方水救会の財政基盤を充実すること。等が主なものです。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION