また、年に数回は整備専門の事業者の診断点検を受けられて大事な財産を安全に管理することが必要です。エンジンの機令も延びてきており環境面および資源のリサイクルという観点からも耐用年数の延長が期待されます。メンテナンスを実施することにより、大切なエンジンの寿命が延び、燃費の節減も図られます。年間わずかな点検料で定期メンテナンスをしていれば、トラブルを未然に防ぎ安心して操業できることになります。
つまり、定期メンテナンスはコストダウンを図り漁業者の経営効率のアップに結び付きますから、多少の費用がかかっても結局お得になります。
日本舶用機関整備協会がやろうとしていること
日本舶用機関整備協会は、漁船等の中小型船舶用機関の整備事業者等約八〇〇社を会員とする全国組織の団体であります。会員の七割以上は主として二〇トン未満の小型漁船の機関整備を主要な業務としています。
このたび、これら会員による「小型漁船機関のメンテナンス事業」を業界の事業として自主的に実施することになりました。この準備のため、当協会に昨年「小型漁船機関整備部会」(部会長=宮城ヤンマー(株)浅野社長)および同部会幹事会(幹事長=ヤンマーディーゼル(株)舶用システム事業部佐藤課長)を設置して事業実施の検討を進めてきました。
機関の定期点検を行う「メンテナンス事業」は、既に陸用発電機、自動車等においては一般化していますが、漁船の分野ではほとんど行われていないのが現状です。しかし、機関動力だけが頼りの漁船が荒天の海上で機関トラブルに見舞われれば、漁労操業が滞るだけでなく、船舶と人命の安全が損なわれることになります。
現実に、機関整備が疎かなために発生したと思われる漁船機関事故は前述のように毎年膨大な件数に上り増加しています。
また、水産業を取り巻く厳しい環境の中で、機令(機関の使用年数)は延びており、機関の寿命・耐用年数を延ばすためにも定期点検・整備は欠かせません。
本事業は、本協会会員である小型漁船用機関メーカ七社(いすゞ自動車・コマツディーゼル・日産ディーゼル・日本ボルボ・三菱重工業・ヤマハ発動機・ヤンマーディーゼル)の全面的な協力のもとに、機関整備を営む会員がエンジンのオイル、エレメント等の交換を含む二〇項目に及ぶ適切な定期点検(年一〜四回)を有料で実施しようとするものであります。
メンテナンス事業のスケジュール
平成十一年度は、本事業で使用するポスター(「海と安全」十一月号裏表紙掲載)、パンフレット、標準書式の点検記録用紙等を作成するとともに、全国一一支部ごとに次のモデル地区を選定して、漁船保険組合、漁協等の関係機関のご指導、ご協力を得ながらモデル地区において試行を開始しました。
小樽・余市(北海道)、石巻(宮城)、酒田(山形)、鴨川〜白浜(千葉)、御前崎(静岡)、師崎(愛知)、鳥羽(三重)、岸和田(大阪)、簑島(和歌山)、明石(兵庫)、広島、走島(広島)、益田(島根)、伊吹島、牟礼(香川)、鐘崎(福岡)
おって、モデル地区での試行の結果を踏まえて、平成十二年度より順次対象地域を全国的に拡大して事業の定着化を図る予定にしております。
メンテナンスのやり方
定期メンテナンスのやり方は概略次のように計画しています。
1] 本協会会員である整備事業者が漁業者の方々から定期メンテナンスの申込を受けます。
この場合、年間のメンテナンスの回数をオイル交換時期を基準にして、漁種および稼働時間を考慮して決めます。
2] メンテナンスの実施時期は、漁労時期等を考慮して双方が都合の良い時期とします。
3] 点検項目は、二〇項目あり機関の静止状態ならびに運転状態において点検を実施します。点検方法については点検基準に基づき、専門技術者が実施します。