事業開始直前から鮮度保持方式が角氷から海水冷却装置に変わっていたので、
1] コンテナ内の冷水循環が支障なくできるか。
2] 漁獲物の計量に支障ない程度に水切りするのにどのくらい時間が必要か。
3] 水切り後、コンテナ底に開けてある水抜き穴で魚体が傷まないか。
4] コンテナの横に設けた排出口からうまく魚が出るか。
などの試験を行った。その結果、
1] コンテナ内の水温分布は均一と判断される状態で推移し、冷却循環が支障なくできていることが確認できた。
2] 三六〇リットルコンテナの底面と側面に直径一六ミリの穴を合計四八個設けたが、漁獲物の計量に支障のない程度に水切りするには、重量計測結果から吊り上げ後一五〜二〇秒あれば十分ということが分かった。
3] 水切り後、コンテナ底に開けてある穴で魚体が傷まないか観察したが、鮮度が良好に維持されている魚体は張りがあり、問題ないことが判明した。
4] 排出口の両サイドの約四〇ミリの窪みがあったため、数尾のメジカが残ることがあった。なるべく窪みができないよう制作時の配慮が必要なことが分かった。
必要な改良を加えコンテナ魚倉は実用に向けて動きだした。平成十一年九月現在、合計二七隻がコンテナ化している。
5、 コンテナ化のメリット
1] 水揚げ時間が三〇〜四〇分から五〜一〇分に短縮された。
2] 腰痛などの原因になる荷揚げ、計量作業から解放された。
3] 漁獲物が早く整理されるので、鮮度保持の上からも有利。
4] 計量がコンピュータの接続により漁協事務の簡素化に役立つ。
5] 家族総出で行った水揚げ作業が家族一人の手伝いで可能になった。
6] 漁業者の高齢化対策や後継者確保にプラス作用する。
7] 従来に比べ労働が軽減化され、同時に休養時間が増えたので、結果として安全の向上につながる。
6、 コンテナ化の課題
1] 魚倉のコンテナ化には一〇〇万円程度が必要で、それがネックの漁業者が多い。
2] 現在自動計量装置を装備したホイストは二基、コンテナ化船がさらに増える場合は、自動計量装置つきホイストを増やす必要がある。
などの課題が残されているが、ほとんどの漁業者が将来に向けてコンテナ化は必要と考えている。
船長(ふなおさ)さんに先見の明があったことがここで認知されたのだ。そして、下ノ加江の漁業者の多くが新しいものに向かって挑戦していく姿をそこに見ることができる。

写真5 魚庫コンテナの吊り上げ(フックのもう少し上に荷重検出部がある)
おわりに
下ノ加江地区の漁業が同一漁種の集団日帰り漁業という形態のため、結束が強く、まとまりがよいという事情があったにせよ、このように新しいものに次々と取り組み、実現させていくことに敬意を表したい。
それは、漁協の役員のみならず船主会を中心に漁業者自らが積極的にかつ不断の努力を払っているがための成果といえよう。
黒潮の海で一本釣りにかける男たちに心からの声援を贈りたい。
(平成十一年九月二十日、二十一日の両日、下ノ加江にて取材)