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今回の取材に協力していただいた下ノ加江のみなさん。

左から永井深組合長、漁業者〜岡本特一組合理事、岡政市船主会会長、大西喜美男船主会副会長、船長又則船主会副会長

 

これを受けた漁協では、県漁連へ依頼して新式の救命具「腹巻型」「ポシェット型」の二種類のサンプルを入手、早速海上保安署の安全対策講習会とあわせ、新式救命衣の取扱い説明および実地試用実演会を開き、その上で組合員への購入調査アンケートを行ったところ、半数以上の購入希望があった。

問題は購入価格だ。組合一括購入によるメーカー値引き交渉はもちろん、安全対策事業としての取り組みから、市行政サイドへ事業費助成を要望した。たまたま市議会でも漁船海難多発の防止策の論議がなされており、担当課から個人助成はできないが団体助成なら対応できるとの見解が示された。

紆余曲折があったが、最終的には市から一着七千円の助成を受けることになった。腹巻型は定価二四、○○○円するが、一括購入によるメーカーの値引きと市からの助成により、個人負担は一四、○○○円で購入できることになった。

これで救命衣は高すぎるとの一部ご婦人の不満も収まったようだ。現在では約六〇%の組合員が購入しているそうだ。

しかし、問題も残っている。折角購入した救命衣を常時着用していない人がいることだ。

着用しない人の言い分は、1] 常時着用の必要性は理解しているが面倒くさい。2] 仕事の邪魔になる。3] 自分だけは転落しないと思っている。5] 手すりがついたので安心感が増した。6] もっと作業性のよいものがないのか。などだった。

今後の取り組みは、ほとんどの人が常時着用に理解を示しているのだから、お互い声を掛け合ってねばり強い着用の啓発運動を続けること以外にないとのことだった。

着用を励行している漁業者の一人は「自動車にシートベルトの着用が義務付けられた時、最初は違和感があって面倒くさいなどと思ったりしたものだが、いつの間にか抵抗なく自然に着用するようになった。あれと同じことだよ」と時間をかければ次第に定着するとの見通しを語ってくれた。

まだ購入していない一部の方の一日も早い購入と、全員が常時着用して操業してくれることを願いたい。

 

魚倉のコンテナ化とメリット

 

さて、手すりや救命衣が安全確保の目的で取り組んだのとは異なり、魚倉のコンテナ化は荷揚げの合理化が目的だった。

1、 コンテナ化への伏線

下ノ加江には、いろいろと工夫をすることに熱心な漁業者・船長又則(ふなおさまたのり)さんという方がいる。

昭和五十年のこと、船長(ふなおさ)さんは、肩こりを防ぐために自船の魚倉を五〇〇キロ入りのコンテナに改造して実験した。しかし、荷揚げ用のホイストがその能力不足とホイストに計量器が取り付けていないことから実用化には至らなかった。

しかし、このことがその後のコンテナ化への大きな伏線となった。

2、 水産庁からの話

土佐清水市にある漁業指導所の所長から水産庁漁業技術課技術班に連絡が入り、メジカの荷揚げの省力化対策についての要請が寄せられた。これを受けて平成三年度の高度合理化漁船設計検討会(水産庁補助事業、担当(社)漁船協会)の課題に取り上げられ、調査、検討がなされた。

 

 

 

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