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もちろん新しいシステムの導入に伴う、新しい仕事や負担の発生を押さえること、具体的にはシステムの取り扱いについての知識や訓練の負担を極力押さえることが必要である。以上のことからOPBOシステムには次のような機能を持たせることとした。

1]音声入出力機能

OPBOシステムを導入する以前の船橋作業は、複数の乗組員による共同作業であり、そこでのコミュニケーションは言葉である。そこで、ここではシステムと運航者間のコミュニケーション手法として音声入出力機能を導入することとした。これにより運航者は従来の作業形態を大きく変化させる必要がなく、また新しいシステムの操作にも直ぐに慣れることが期待できる。

2]情報収集表示機能

表1にも示したとおり、収集すべき情報としては航行環境情報や自船情報がある。こうした情報の収集や解析には多くの労力を必要としている。そこでOPBOシステムでは最新の機器を導入し、情報収集や解析の運航者にかかる負担を軽減し、情報の統合化を企て、運航者が必要とする情報を使いやすい情報に加工して提供することとした。

3]行動決定補佐機能

使命を達成するため自船は安全で効率の良い行動を採る必要がある。こうした行動は、遭遇する航行環境と自船の状態により変わる。

そこでOPBOシステムでは、収集した航行環境情報や自船情報を、行動決定のために処理する機能を持つこととする。これにより航海計画の実行程度であればシステムで処理可能とし、航海計画の変更を必要とする局面では、行動決定を補佐することとした。

4]行動実施機能

自船の採る行動には、針路・速力等の行動制御と信号がある。OPBOシステムでは運航者の指示に従って行動を実施する機能を持つこととした。

5]就労監視機能

OPBOシステムは基本的に単独当直のためのシステムであるので、当直者に問題が起きた場合の対応を考えておく必要がある。OPBOシステムとしては当直者の就労状況を監視する機能を持つこととした。

 

三、OPBOシステムの開発

 

二で述べた機能をOPBOシステムとして具体化するに当たり、航海支援システム研究チームは次のような調査を行った。

1]当直体制の機能要件抽出のためのシミュレータ実験

ここでは長時間航行の安全性を、船舶技術研究所にある航行シミュレータを用いて評価し、長時間航行における当直体制、備えるべき支援機器の機能、長時間航行の安全を担保するための方策について検討した。

2]狭水道航行における運航支援構築のためのシミュレータ実験

狭水道航行における適切な支援のあり方を明らかにするために、来島海峡を対象としたシミュレータ実験を行い、適切な支援装置としての機能仕様を求めた。

以上のシミュレータ実験結果を基に、OPBOシステムの設計仕様を作成し、このシステム製作のためメーカーによるコンペを実施した。七社の参加があり、それぞれから提案された内容を開発期間、コスト、音声入出力装置への対応などを考慮して評価し、その結果として三菱重工業(株)の案を採用した。

OPBOシステムは、操船に必要となる情報の単なる収集・提供ではなく、真の意味で操船者を支援する目的で設計されたシステムであり、財日本海事協会(NK)の船橋設備規則BRSIAの登録を受けることができるように設計したものである。このシステムの具体的機能を表にまとめると表2となる。

また船内・船外とのコミュニケーション手段としては、国際VHF電話装置、自動交換電話装置(船舶電話と接続)、船内指令装置、共電式電話機、船舶電話(FAX兼用)を持っている。

 

 

 

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