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OPBOシステムによる船舶運航

―新ぷろぱん丸でシステムの有効性を実証―

東京商船大学 教授 今津隼馬(いまづはやま)

 

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筆者

 

一、はじめに

 

内航船における若年労働者の不足は深刻であり、このままでは老練な船員の持つ豊かな船舶運航経験や知識を次の世代に伝承できるかどうかが危ぶまれるとともに、労働者不足による係船の可能性まで考えられるようになってきた。

こうした状況を解決する一つの方法は、経験豊かな船員の意見を聞きながら船舶運航の自動化を進め、一隻当りの船舶運航者数を減ずることである。

平成五年に船舶技術研究所から、内航タンカー海運組合と船舶技術研究所で共同研究を発足させたので、その中の航海支援システム研究チームヘ参加をとの要請があった。この研究チームの課題は、一人当直体制を可能とする船舶運航システム(OPBOシステム=One Person Bridge Operation System、開発時はOne Manから採ってOMBOシステムと呼んだが、船員が男性だけではないことから表記の名となった。ここではOPBOの方を採用した)を開発すること、即ち一人の当直者とこのシステムにより、船舶航行の安全性と信頼性を今までと同等以上にすることである。

そこで研究チームは、まず既存の各種支援システムを調査し、次に船員の意見や要望を聞き、さらにシミュレータを使って船舶運航作業における問題点を抽出し、その成果を元にOPBOシステムを設計した。そして、平成九年九月にはOPBOシステムの有効性を実証するために、このシステムを搭載した「新ぷろぱん丸」を竣工し、これを使っての実船試験により本システムの有効性を実証することができた。ここでは、こうして開発したOPBOシステムの概要と特徴について説明する。

 

二、OPBOシステムの設計概念

 

船橋における船舶運航作業は、表1に示すように情報収集、行動決定そして行動実施の三種類に大別できる。

 

表1 船舶運航作業の内容と関係機器

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なお、この表1の作業内容ごとに、関連する最新の機器や装置を挙げると表1の右端欄のようになる。このように、こうした作業は各種の機器や装置を使い、また航海士や操舵手との共同作業により行われている。ここでの課題は、この作業を一人で行うことであり、このためには最新の機器を導入し、これを統合化することで一人当直を可能にする必要がある。すなわちOPBOシステムとしては、有能な見張員として(情報収集の補佐)、熟練した操舵員として(行動実施の補佐)、また経験豊かな航海士として(行動決定の補佐)の三役を果たすことで、船橋に残った一人の運航者の作業を補佐し、その負担を大幅に軽減することが望まれる。

 

 

 

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