海の気象
「東シナ海の気候図」でみる東シナ海の風と波
田代知二(たしろともじ)
長崎海洋気象台海上気象課技術専門官
はじめに
気象庁では内外の船舶から海上気象観測データの収集を行っています。このデータに基づき、当庁では北西太平洋の海上気象の把握に努めています。一九九三年には、「北太平洋海洋気候図三〇年報(一九六一年から一九九〇年)」を刊行しました。
長崎海洋気象台では、この気候図を用いて一九九九年三月に「東シナ海の気候図」を作成しました。この気候図には海面気圧、気温、海面水温、風速、波高などの気象要素や熱量の年平年値分布図、月平年値分布図および代表点の月ごとの変化図が掲載されています。
今回はこの気候図から船の運航に最も重要な秋と冬の風速と波高の特徴について述べます。秋のデータとして十一月の値を、冬のデータとして二月の値をみることとします。この値は一カ月間のデータを平均したものですから、実際に観測されるものはこれよりも低い(弱い)場合や高い(強い)場合があり、注意が必要です。また、東シナ海の「時化やすさ」のめやすとして、風の二八ノット(海上風警報基準)以上と波高の三メートル(波浪注意報基準相当)以上の出現率を調べました。出現率は全データにおけるそれぞれの現象の割合を%で表しています。
【秋(十一月)】
図1、2に十一月の月平均の風速(単位はノット)と波高(単位はメートル)の分布図を示します。
風速は台湾近海で二〇〜二二ノットと強く、黒潮域と東シナ海南部で一六〜二〇ノット、東シナ海北部と黄海で一五ノット前後です。北緯二七度以南では最も風の強い季節です。