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○居眠り運航の防止

・居眠り運航は、次のような場合に多発する傾向にある。

ア 夜間から朝方にかけての時間帯(特に、早朝)

イ 単独当直で、自動操舵装置を使用しているとき

ウ 当直を引き継いでから一時間経過後

エ 当直者が労働等による疲労、睡眠不足のとき

オ 入港(当直交代)までわずかなので、居眠りをすることはないと感じたとき

・居眠り運航を防止する措置として、当直者の増員(複数での当直)当直の交代、出航延期などがある。

 

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○船長および当直者等の服務

・船長の当直者に対する指示あるいは当直者の船長に対する報告等の服務が適正に行われなかったことにも海難の原因があるので、次のことを励行する必要がある。

ア 船長は、船橋当直者に対して適切な指示を行い、視界制限時、狭水道、船舶の輻輳する海域、その他船舶に危険のおそれがあるときは、自ら操船の指揮をとること。また、部下に対して、船舶に危険のおそれがある状態となったときは、その旨の報告が得られるよう日ごろから具体的な指導、監督を行っておくこと。

イ 船橋当直者は、報告や引き継ぎを的確に行うこと。

 

乗揚海難事例

 

針路の選定・保持不良

 

薄明時、糸満漁港において水路に沿う針路で入航中、針路の保持が不十分で浅礁に乗り揚げた事例

 

船舶の要目等

 

総トン数 一九トン

用途 漁船

発生日時 平成○年○月○日十八時三十分

発生場所 沖縄県糸満漁港

気象海象 雨、北風、風力三、下げ潮初期

 

事件の概要

 

A丸は、はえ縄漁業に従事するFRP製漁船で、甲機関長(当時操船中)ほか二人が乗り組み、まぐろ漁の目的で、沖縄諸島南西方沖合漁場において操業を行い、帰途に就いた。

ところで、甲機関長は、息子の乙を船長として乗船させ、自らは六級海技士(機関)の免状で機関長として乗り組んだものの、一級小型船舶操縦士の免状も受有しており、長年船長の職を執ってきたことから、乙船長には操船を任せないで自ら指揮を執り、糸満漁港を基地に十年以上も操業していたので同漁港の夜間入航の経験も豊富であった。

甲機関長は、十八時〇七分ごろ糸満漁港南西方沖合のトコマサリ礁立標から三五六度(真方位、以下同じ。)、一、七七〇メートルばかりの地点に達し、糸満漁港の西水路の西側出入口に設けられた灯浮標を視認したとき、針路を同出入口に向かう〇四〇度に定め、機関を約三・○ノットの微速力前進にかけ、主機の操作と操舵がともにできる遠隔管制器に切替え、以後は同水路に設置された灯浮標列に沿って航行すればよいと考え、使用していたレーダーを停止し、見張り要員として船首に乙船長を、船橋の屋根に甲板員をそれぞれ配置して進行した。

ところで、西水路は、トコマサリ礁立標から〇一五度一・五カイリばかりの地点を西側出入口とする、さんご礁を開削した可航幅一五〇メートルの水路で、同出入口から〇六五度方向に約六〇〇メートル、次いで〇七四度方向に屈曲して約一、○○○メートルの長さを有し、同出入口には糸満港西水路第一号灯浮標(以下、灯浮標の呼称については、「糸満港西水路」の名称を省略する。)、第二号両灯浮標、屈曲部には第三号、第四号両灯浮標、および東側出入口には第五号、第六号両灯浮標がそれぞれ設置されていた。

 

 

 

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