特集
乗揚海難の実態
海難審判庁
このたび、海難審判庁は最近五年間(一九九三〜九七年)に発生した海難事故の実態調査結果を発表した。
これをみると全体的に海難発生件数は減少傾向を示しているが、平成九年に東京湾で発生した大型タンカーダイヤモンドグレース乗揚事件のように社会的に影響の大きい海難事件があとを絶たず、またこの五年間に地方海難審判庁において裁決のあった裁決件数に占める乗揚事件の割合も、前回(昭和五十六年四月発表)と比較しても減少していない。このため、今回再度「乗揚海難」の実態を取り上げ、その再発防止に資するため調査・分析を行ったものである。
海難の概要
今回の調査の対象となったのは、八六一件(八六一隻)で、その主な概要は次のとおりである。
(1) 船舶の種類別
漁船が三一六隻(三六・七%)(以下単位は同じ)と最も多く、次いで貨物船二七〇(三一・四)、レジャー船七三(八・五)、旅客船五四(六・三)、引船等五三(六・二)、油送船三九(四・五)、その他五六(六・五)となっている。
(2) トン数別
二〇トン未満が三七九隻(四四・○)と最も多く、次いで二〇トン以上二〇〇トン未満二五五(二九・六)、二〇〇トン以上五〇〇トン未満一五〇(一七・四)、五〇〇トン以上一、六〇〇トン未満四四(五・一)、一六〇〇トン以上五、○○○トン未満一七(二・○)、五、○○○トン以上一六(一・九)となっており、二〇〇トン未満の船舶で六三四隻となり、調査対象隻数の七割以上を占めている。
(3) 発生月および時刻別
月別では十一月が九二件(一〇・七)と最も多く、次いで六月が八○件(九・三)等となっている。
これを船種別にみると、レジャー船では、五月から八月の四カ月間でレジャー船が年間海難の六割以上の比率を示している。
また、時刻別では、○時から〇四時までが二二・一%と最も比率が高く、次いで〇四時から○八時までが二一・八%等となっている。
(4) 発生場所別
発生場所の状況は船舶の輻輳する瀬戸内海等が二四九件(二八・九)と最も多く、次いで九州沿岸一九二(二二・三)、南西諸島一二一(一四・一)、本州南岸一一一(一二・九)等となっている。これを船種別にみると、旅客船では南西諸島が二五件(四六・三)、貨物船では瀬戸内海等が一五〇件(五五・六)、漁船では九州沿岸が九〇件(二八・五)、レジャー船では瀬戸内海等が二五件(三四・二)とそれぞれ最も多く発生している。