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BAN

湘南商工株式会社

代表取締役社長 井上晴美(いのうえはるよし)

 

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第一話

 

危険と安全は昔から紙一重と言われ、わずかな差がどちらかに結びつくものであり、人間は空でも海でも陸でも存在する場所において、常に安全を求めることが義務であると思います。

海においても最近レジャーブームが、平成不景気の影響で下火になったとはいえ、海洋レジャーの普及から関係筋による集計によっても、レジャーボートの海難事故件数は増加傾向にあると伺っています。

では事故はどうして起きるのか……?

難しい答えではありません。不注意の一言です。

偶然とか不可抗力とかいろいろな弁解の方法がありますが、すべて事前に注意深く処理すれば予防できるのです。ではどうすれば予防できるのか事例を交えてあとで説明したいと思います。

ところで皆さん、海はすてきですね。夕日が沈む水平線を見ながら、夕闇せまる静かな海、なんとロマンチックな情景が眼に浮かびます。……かと思うと風吹きすさび荒れまくる白波その千差万別の変化は、人間の喜怒哀楽に似たロマンを感じさせるものではありませんか。

ついでに私のプロフィールを披露すると、海に魅せられたひとりとして、一四フィートから一九トンの船まで八隻の船を乗り継いで二十九年、いまだに若き青年士官のつもりが一回りさば読む年でも五十五才、いや本当は六十七才、喜寿も近くいつお迎えが来てもおかしくない年なあんていやですね。年を考えると自然に気持ち悪くなりますが不思議に海へ出るとすぐ若返るのです。

ところで海の安全のテーマから大分脱線しましたが、BAN救助船の立場からいくつかの事例をもとに、海の安全について気がついたことを披露したいと思います。

BANから出動要請の入電があると、まずGPSの緯度経度がわかっている時は、会合する場所に問題なく到達しますので、天候や海況が若干状態が悪くても、作業はスムースに進行します。しかしGPSを積んでいない場合もあり、あるいはGPSの取り扱いに自信のない人のため、何度か振り回された経験があります。

当日は視界の良い日でした。救助依頼船からGPSの緯度経度は伝えますが、あてになりませんので無視して下さいと言われ、現在は観音崎と久里浜沖の中間ですと言うので久里浜に行くと、久里浜沖に該当する船がありません。

再度状況を聞くと観音崎と久里浜の中間で、金谷沖にいますと言われ東京湾を横断し、金谷沖を捜索したけど見当たりません。

そこで、最初に聞いた緯度経度のメモをGPSに入力すると、今まで捜索していた所より先に表示されたので、すぐに戻ると表示された位置でぴったりと会合できました。

アンカー打ちしてあったので流されることもなく、その後は順調に処理できました。

GPSの表示を信頼して欲しいと思いました。その時私はちょうど海図を陸に上げていたので、方位を聞いても勘を頼りと処理した当方にも反省の余地がありました。

その後は、GPSのない小型船を何隻か牽引しましが、目視三点法で方位を確認しただけでスムーズに会合するようになりました。

 

 

 

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