はじめに
本誌でも触れられているように、要救助船舶を用途別に見ると、平成九年以降プレジャーボート等がワーストワンを占めるという、憂慮すべき状況が続いています。
海国日本といわれ、事実四周を海に接しているわが国にとって、その海が海上輸送や漁業など仕事の場として使われるだけでなく、レジャーの場としても大いに活用されることは、私のような立場にある者にとって喜ばしい限りではあるのですが、一方、それが基で海の安全が損なわれたり、そこに働く人たちや、海辺で生活する人たちとの間にあつれきを生じたりしたのでは本末転倒といわざるを得ないことになります。
今回、機会をいただいたので誌面をお借りして、当協会、とりわけそのうちの特定事業本部が行っている小型船舶操縦土資格に関わる業務について、その概況を紹介してみたいと思います。安全で楽しめる海を実現していくために小型船舶操縦士資格が果たす役割について、関係各位のご理解を深めていただく一助になれば幸いです。
小型船舶操縦士資格
小型船舶操縦士免許は昭和二十六年に制定された船舶職員法で海技従事者資格の最下位にはじめて規定されたものであるが、当時は総トン数二〇トン未満の漁船に乗り組むものが対象であり、また総トン数五トン未満は対象外であった。
その後、小型船の海難事故を未然に防止する観点から、五トン未満の船舶も対象に加え、試験内容についても身体検査と学術試験に加えて実技試験を課すなど、モーターボートの普及による一般ユーザーの急増等、社会情勢の変化に合わせて幾度かの制度の改正を経た後、昭和四十九年の法律改正により大型船の免許と根本的に分離し、小型一級から四級に細分化された現在のような資格制度が定められた。
最近の動きとしては、平成十年五月の法改正により、新たに五級小型船舶操縦士資格が付け加えられ、関係省令の改正も終わって平成十一年五月二十日には同資格がスタートした。その他、同年二月一日から、身体検査基準のうちの弁色力に関して、従来認められていなかった強度の色弱者について、日出から日没までの間において航路標識の彩色を識別できれば合格できることとなった。
試験機関
昭和四十六年には激増するモーターボートの安全対策のため、小型船舶操縦士養成施設制度が発足し、第一種養成施設においては乗船履歴のない未経験者についても、所定の学科・実技教習を受け修了試験に合格すれば、国家試験が免除され、免許が取得できることとなった。当初養成施設を開設したのは(財)日本モーターボート協会(現マリンスポーツ財団)と(財)日本船舶職員養成協会であり、その後(財)尾道海技学院、(財)中国船舶職員養成協会、(財)関門海技協会も開設した。
その後、前述の昭和四十九年の法律改正において、急増する小型免許取得希望者に対して合理的に免許試験が行えるよう、既存の公益法人の力を活用した「小型船舶操縦士試験機関」を設立することとなり、先の五法人の中から(財)日本モーターボート協会が試験機関として指定された。