山本 時間帯をずらして何回か聞くと全体が把握できます。それには経験が必要ですが、プレジャーボートの海難防止には天候の把握が重要です。
菅野 海上保安庁の船舶気象通報は、おっしゃるとおり現況ですが、自分の船の西の方の船舶気象通報の現況を聞いて自分のところの今後の気象を判断している人もいると聞いています。気象は一般的に西の方から変化しますから。
自動車感覚
菅野 プレジャーボート等の海難ではモーターボート海難が全体の約七割とダントツに多く、また機関故障がモーターボートでは二五%と一番多いのですが、根本さんいかがですか。
根本 機関故障が多いのは、持っている人がボートを自動車と同じように考えている人が多いということがいえると思います。
あるボートが桟橋から出がけにプップッと音がしていたのですが、桟橋を離れたとたんエンジンが止まって仕舞いました。調べたところ燃料コックが閉まっていました。パイプに残っていたガソリンだけでかかっただけです。船に乗ってすぐエンジンをかけ、出ていくのでこんなことになるのです。点検など一切しない人が多いのです。
山本 まさに自動車感覚ですね。エンジンをかけてすぐ出かけ、帰ったら車庫に入れてすぐ家に入るというような……。
根本 若い人は、マリーナヘ来るとすぐ海に出て、帰ってくると船を洗うか洗わないかのうちに、エンジン整備もしないで帰ります。
私たちは一〇回来ると七回海に出て、三回ぐらいは船の手入れをしたり、船の仲間と話し合っています。そのようにしてほしいのですが。
菅野 まず、ボートのエンジンは自動車のエンジンより故障しやすいこと、海の上では故障したら衝突、乗り揚げ、転覆などの危険が一杯だということをよく認識してほしいですね。
クラブやグループに入れば、点検のポイントなどの大事なことが自然に身につくのですが。
海へのいざない
菅野 日本人は、周囲を海に囲まれておりながら案外海のことを知らないのではないでしょうか。
根本 そうですね。日本人は海や船を知らなさ過ぎます。海や船の経験ができにくいのです。今の子供たちは海へ憧れることがあるのだろうかと思います。
それと最近よくマナーが悪くなったという声を聞きますが、私は最近海に出てきた人たちはマナーが何かということを知らないのではないかと思います。
山本 モラルやマナーの問題は小さいときの育ち方によるのでしょう。海での遊びの部分を増やしていく、もしくはわれわれのような団体が働きかけて海や船との接触の機会をつくることだと思います。海の日の七月二十日だけを盛り上げても効果はありません。
菅野 確かに今の青少年にどうしたら海に親しんでもらえるかという課題があると思います。
私は江ノ島沖で小さな子供たちが小さな帆を揚げたヨットでカルガモのように一列に並んで出でくる光景を見たことがあります。あのようなものをもっと各地で盛んにすることはできないでしょうか。