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また、実況の解析に利用する観測データの品質は、システムの性能に影響を与える重要な問題です。このため、徹底した品質チェックが行われます。毎日の品質管理で蓄積された問題点は、定期的にWMO(世界気象機関)などに報告され、気象観測の品質の維持・向上に役立てられています。

さらに数値予報の結果は、その後の気象観測データなどを用いて、さまざまな角度から検証されており、その結果をもとに、予報モデルの改良が続けられています。

このような情報の流れを通じて、それぞれの処理が有機的に結合し、システム全体の性能が向上します。一方、処理のどこかに欠陥があった場合、その影響が全体の足を引っ張る危険性も併せ持っています。

 

数値予報の精度

 

数値予報処理の全体像を踏まえた上で、予報精度を左右する要因を考えてみます。ここでは、数値予報の初期値の問題と、数値予報モデル自身の問題という二つの大きな問題があります。

 

観測・初期値解析の誤差

 

先に述べたように、観測データの誤差は、初期値解析の際の品質管理で正すことができます。ここで、異常なものが除去されたり、バイアスなどの組織的な誤差が修正されます。しかし、測定につきものの偶然誤差(ランダム誤差)の影響や、規則的に配置されたモデル格子ヘデータを内挿(ないそう)するなどの処理があるため、初期値の誤差を完全になくすことはできません。

また、品質管理に失敗して間違ったデータを取り込んでしまうと、数値予報は失敗します。さらにその結果は、次の時刻の初期値解析の推定値として利用されます。もしも予報が外れた地域に多くの観測があれば、次の時刻で誤差を修正できますが、観測のまばらな地域では、そうはいきません。誤差を次回に持ち越すことになります。

図2は、陸上と海上の観測点の分布例です。陸上に比べ固定観測点の少ない海上はデータが不足しやすく、それを補う船舶やブイからの通報は、数値予報にとって重要性の高いものになっています。

 

図2 1999年5月11日00標準時(日本時間で午前9時)における、陸上(白丸)と海上(黒丸)の気象観測点の分布。数値予報システムに取り込まれたもののみを表示している。この図から、海上観測点の分布密度が、陸上に比べ小さいことが分かる。このため、個々の海上観測の相対的な重要性は大きい

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