写真7では、岩礁地帯での「潮だまり」として擬岩が採用されました。設置して数力月後に調査しましたが、海藻類が繁茂し、小魚が数千匹、群れをなして泳ぎ、また、それを狙ってシロサギが魚を捕っていました。
写真6までに見た擬岩でも景観上の配慮だけでなく、生態系への配慮として凹部を設けて水抜きを設置して植栽を施したり、魚道にはくぼみを作り、遡上(そじょう)前の休憩所を設けるなどの工夫がなされています。
擬岩による「潮だまり」では、生態系にもっと積極的に対処するため、事前に磯の生物調査を実施し、くぼみ、溝やオーバハングした部分等、生物の生息空間として多様性に富んだ岩模様としています。
また、深さをコントロールし、子供たちが安心して磯遊びできる空間を作りだすことができました。
自然景観のなかの擬岩
自然景観のなかに擬岩を設置する場合、いくつかの具備すべき条件があります。
1]「本物」であること
擬岩はもともと動物園やレジャーランドのディスプレーとして発展しました。擬岩の「擬」という字は「贋物、まねる」という意味があり、あまりよい印象はありません。動物園やレジャーランドでは、あきらかに人工物と分かっても違和感がありません。しかし自然の中では、あきらかに人工物とわかるようでは、マイナス効果になってしまいます。自然の中の人工岩場は見た感じはもちろん、触った感じ、ぬれた感じも「本物」でなくてはならないということです。
2]メンテナンスフリー
動物園やレジャーランドでは、修理も容易に可能ですが、自然のなかの擬岩は断崖・絶壁などのケースも多く、簡単には修理できないケースがあることから「メンテナンスフリー」が必要となります。
3]急速施工
景勝地での施工は足場の悪いケースが多く、天候に左右されやすく、特に海上工事では天気の良い場合でも潮待ちしなければならないこともあります。工費縮減のうえからも、施工現場での急速施工が要求されます。
擬岩の施工法
それでは、このような擬岩がどのようにして作られるのか、見てみましょう。
1]岩肌の表現法
表面の岩肌を表現する方法として「型取り法」と「吹き付け法」の二つがあります。
「型取り法」では、自然の岩場から特殊ゴムを用いて型をとります。その型に擬岩材料を打設して、薄片状とします。これを組み合わせて全体の岩場とします。自然の岩肌を転写するので、実物そのものが表現できます。
「吹き付け法」では、金網の上に擬岩材料を吹き付け、「こて」等で岩肌を表現します。コストは「型取り法」よりも多くの場合、低くなります。