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海岸の景観向上を目指して

(株)テトラ 環境事業本部

景観エンジニアリング部長 向井達夫(むかいたつお)

 

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筆者近影

 

はじめに

 

高潮や津波による越波・浸水などの被害や、砂浜の侵食被害を防ぐため、さらには港湾の整備等のため、多種類の消波ブロックが使われています。各社の特徴を生かし、防災機能を追求し、四本足、五本足、六本足や穴あき等、その数は一〇〇種類以上あるといわれています。ここでは、その中、消波ブロックの代名詞のように呼ばれているテトラポッドについて述べておきます。

テトラポッドは四本足という意味で、一九四九年、フランスで発明されました。最初に使用されたのは、一九五〇年、モロッコの火力発電所です。わが国では、昭和三十年ごろ初めてテトラポッドが用いられました。それ以降、五〇〇キログラム〜八〇トンまで数多く採用されていますが、消波機能、安定性、施工性等を考慮に入れた完成度の高さから、発明以来約五〇年経た今日まで、その美しい形状は何ら変化していません。

新幹線や飛行機に見られるように高速・低騒音といった機能を追求するとますます美しくなるように、消波機能を高めるほど消波ブロックもそれ自体は機能美としての美しさがでてきます。しかし、古都の中に突然近代的な機能美を持ったビルが出現しても全体としての景観美が損なわれるように、白砂青松の砂浜に消波の機能美を持ったブロックを設置する必要性がある場合でも、個々には美しくとも、景観全体としての調和が重要なのは言うまでもありません。

 

海岸の景観向上対策

 

景勝地にも護岸や防波堤等の防災構造物が必要です。防災と景観美を両立させるため、さまざまな工夫がなされています。

その一つの例として潜堤があげられます。これは、高潮や砂浜の浸食被害を防ぐための離岸堤を、景観向上の観点から見えなくするため、水面下に沈めたもので、消波能力が低下する分は堤の幅を広げることにより対処しており、各地で建設が進められています。

防災と景観美を両立させるもう一つの代表例として擬岩の採用が挙げられます。自然景観のなかに擬岩修景が採用されるケースは大きく分けて二つあります。

その一つは、景勝地に防災目的で護岸や防波堤を設置すると、周囲の景観との調和が取れず、違和感・圧迫感がでてきます。これを取り除く、または、軽減するため擬岩が採用されるケースです。

もう一つは、町や村の名物岩が浸食のため崩落し、観光資源がなくなってしまうおそれがある場合です。浸食を防止し、修復・修景するために擬岩が採用されます。

 

擬岩による修景例

 

写真1では潜堤の標識に擬岩が採用されています。潜堤は水面下にあるため船舶が安全に航行するために標識が必要ですが、その標識として周囲の岩礁地帯と調和させて、擬岩が採用されています。

写真2では、岩礁地帯の護岸に擬岩が採用されています。景勝地にも護岸は必要ですが、美しい岩礁地帯に長い護岸のコンクリート構造物が出現すると、周辺の自然になじまず、浮き上がってしまいます。この施工例では、岩礁地帯に点在している岩を利用して、護岸を作ったというデザインで、長いコンクリート構造物の出現による違和感を軽減しています。

 

 

 

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