一方、火力発電所では大量に海水を導入して、冷却装置に海水を利用していますが、クラゲの大量発生で取水トラブルが起き、海水の取り入れが困難となり、発電所の運転を中断しなければならないことがあります。
しかし、環境に有用な生物を生かして流し去る工夫はないかと東京電力より相談を受け、近隣海域の一部を仕切り、水流発生装置でエアレーション(空気の泡)を起こして流し去る方法を提案し、開発に成功しました。現在クラゲの生態を通して大量発生の原因究明に共同研究を行っております。
サンゴの重要性
サンゴ類は海岸域でよく見られます。潜水技術が発達した中で、沖縄の石垣島などではすばらしい生態がみられます。そのサンゴとても重要な動物であるということ、海草のようにプランクトンが稚魚に育てるゆりかごの役目をしておりますが、またそれを食する動物性のプランクトンや小魚が寄り添う所がサンゴ礁です。このサンゴ礁は、空気中の二酸化炭素を吸収することでは森林の効果よりも大きいことが分かってまいりました。
美しくきれいな海に、食物連鎖のもとである植物プランクトン海草類、動物プランクトンが豊富であり、それを食する小魚達、さらには大型動物というように、海水中はおいしいスープのような栄養素があり、動植物性プランクトンから小魚−大型と食物連鎖を行い、海の王者鯨類シロナガスクジラが巨大な海の中の食物連鎖の頂点となります。さらに陸上では、人間が食物連鎖の頂点となります。
海を豊かにすることは、乱獲を防いで漁業を適正な漁獲高にすること、産業廃棄物や河川からの汚染水を流さないようにする努力にあります。大量消費、大量投棄が川から海へと影響を及ぼしますと、海岸、沿岸域は食物連鎖が機能しなくなって動植物の減少につながってまいります。
海岸、沿岸域を豊かにすることでは、山地の森に植林をして、栄養のある川の水をまずつくる。また藻場やサンゴ礁、干潟の生きものを守るということになりますが、水族館でもその自然の回復に努力し、自然環境の役割に務めております。
その一例にサンゴと同じ生態系を水槽につくるのですが、モナコの水族館が開発したもので「モナコ水槽」と称しております。光とサンゴ礁の砂、サンゴ石を入れ、濾過循環を行うことを一切やめて、自然の流れをつくります。そこに三〇種類のサンゴを入れておきますと、サンゴがどんどん育ってまいります。
それは強い光と静かな水流に、酸素を好む好気性細菌のサンゴ砂と暗い底の砂の中に嫌気性の細菌を育て、その微妙なバランスで透明な栄養のある水環境をつくることにあります。育ったサンゴを海に戻す実験を今もモナコでは行っております。
また、水族館では稀少野性生物をどう保護するか、「種の保存」活動を大切な役割としてアザラシ、ラッコなど哺乳動物を飼育下で増やし、また海で傷ついたラッコやアザラシを保護して自然の海に戻す、そのような活動も行っております。