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今日本では一〇〇を越える水族館があり、数の上では米国を抜いて世界一の水族館王国になりました。この急速な発展は戦後五十年の出来事であり、ますます大型化された巨大水槽にはジンベイザメや群れをなして泳ぐまぐろやかつお、いわしなど、水界により近づける臨場感がダイナミックに創出されるようになりました。

このことは、高度に発達した水処理技術や設備、装置など現代建築の粋を凝らした装置的背景があり、自然界の創出は、水族館にとっても科学技術の進展と共に拡大路線に乗ってこれたわけです。

 

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江ノ島水族館全景

 

水族館の歴史

 

さて、水族館はいつ、どこから始まったのか少し歴史的背景に触れてみたいと思います。

一八三〇年フランスのボルドーにできたのが最初といわれており、それはかなり単純なもので淡水の熱帯魚槽を数台並べただけのものだったようです。ヨーロッパでも日本でも動物の収集は王侯貴族が趣味の範囲内で珍しいものを集め、宮廷の庭園に動植物を配置し飼われていました。

もっと古くは古代バビロニアに紀元前二〇〇〇年ごろ養魚を行っていたり、中国でも周代、紀元前一一二〇年養魚として飼われており、四、〇〇〇年近く前から飼育や観賞がなされておりました。

しかし、近世のフランスでは科学として生物をとらえ、博物学者として歴史に残るビュフォン(一七〇八〜一七八八年)は博物学として動植物をとらえ系統分類を行いました。そのビュフォンがパリの王立植物園をジャルダンド・プランツと命名し、初代園長として活躍しました。

今、フランス国立自然史博物館となっておりますが、そこに二番目の水族館ができ、水族館が基本的に多様な展示生物を分類し、記録しておく博物館の仲間であるという歴史的流れがここから始まりました。

三番目がロンドンのフィッシュハウスで、ここにウィリアム・ヘンリー・ゴッスという博物学者がいまして、この方がバランスドアクアリウムを応用して、イソギンチャクや魚の絵を描いたりすることで、水槽を開発し、エアレーションをつけて魚を長く飼えるという工夫をしました。それをロンドン動物園内に三番目の水族館に応用しました。これが本格的な水族館の第一号といわれたゆえんです。

そのゴッスが「ジ・アクアリウム」という素晴らしい本を書いています。自筆の絵と博物学的な内容の本ですが、大変なベストセラーになりました。この本の題名の「ジ・アクアリウム」の「アクアリウム」が水族館の語源となりました。

 

水槽の発明

 

もう一つ、水槽の発明は、アルフレッド・ロイドという水族館の草創期に貢献した人物がおり、今でいう飼育水槽と貯水槽と濾過循環のいわゆる砂濾過の三点セットを開発しました。この発明によって水族館がヨーロッパ各地に爆発的に出てき、一九世紀後半にアメリカに渡って水族館の発達につながったわけです。

これは水槽内の光合成を利用する原理であり、太陽の光と海の海藻類は、二酸化炭素を体の中に取り入れて酸素の一部を海中へ送り出します。この光合成と水循環システムは生きものを長く飼える仕組みでありますが、今日動力は電力を使用する方法に取ってかわり、ガラスも強化ガラスからアクリル樹脂を利用したアクリルガラスを使用しております。厚いアクリル板でトンネル水槽や変形水槽がどのようにでも可能となり、今日の大型水槽が可能となりましたが、水環境のロイドやゴッスの発案の原理は昔と変わりません。

 

 

 

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