親潮系冷水の南下の長期変動
十五年前の一九八四年は、春先に親潮系冷水が犬吠埼付近にまで南下し、異常南下年といわれました。長期的には、親潮系冷水の南下はどのような変動をしているのでしょうか。
図4は、親潮系冷水の沿岸寄りの分枝の月ごとの南限緯度を、一九七〇〜一九九八年について表示したものです。前述した季節変動の影響を取り除くために十三カ月の移動平均をしています。
親潮系冷水の沿岸よりの分枝の南下には、三〜四年周期の変動が見られます。また、南下は一九七〇年代と一九九〇年代に小さく、一九八〇年代に大きい傾向にあることがわかります。一九九〇年代の平均南限緯度は北緯三九・四度ですが、一九八〇年の平均南限緯度は三八・二度です。親潮系冷水の沿岸寄りの分枝は一九八〇年代には前後の十年に比べて平均で緯度で一度以上南下したといえます。
おわりに
最近の研究で、親潮系冷水の南下は北太平洋の冬季の風の変動と密接に関連していることがわかってきました。親潮系冷水の異常南下年には、北太平洋中緯度での西風域が例年に比べて大きく南に移動していたといわれています。
また、北太平洋の大気、海洋双方に十年から数十年で変動する現象が卓越していることがわかってきました。この現象は大規模な大気と海洋が相互に結合した変動であると考えられており、気候変動の解釈のために、そのメカニズムの解明が求められる課題です。親潮系冷水の南下にも十年スケールの変動が見られており、気候変動の解明という点からも、親潮系冷水の南下の監視が重要です。
気象庁では、観測船、一般商船、ブイ、人工衛星等により取得された海洋データを収集し、親潮系冷水の分布やその変動を監視し、情報を提供しています。
函館海洋気象台では、十日ごとに海況旬報を作成し、この中で、海面水温とともに親潮系冷水の分布も示し、関係機関に提供しています。