日本財団 図書館


この人と

 

002-1.gif

海上保安庁 灯台部電波標識課

ディファレンシャル GPSセンター所長

門田雅康(もんでんまさやす)

 

<プロフィル>

昭和十六年生まれ

昭和三十九年海上保安学校卒業

平成三年四月海上保安庁灯台部監理課補佐官

平成七年四月第四管区海上保安本部灯台部長

平成九年四月第一管区海上保安本部灯台部長

平成十一年四月から現職

 

―― DGPSはGPSとどう違うのですか。

門田 GPSは米国国防総省が運用する全世界的衛星測位システムでありますが、一部のサービス(SPS標準測位サービス)は無償で民生用に開放されています。SPSには軍用的理由により精度劣化機能が付加されており、この結果、約一〇〇メートルの精度となっています。船舶がGPSを利用する場合、大洋航行中はこの精度で十分ですが、狭水路や沿岸海域ではもっと精度のよいものが必要となります。

そこで考えられたのがディファレンシャルGPS(DGPS)です。船舶はDGPS局から送信されたデータを使用しGPSによる測位を補正します。当庁が整備したDGPSは、誤差を一〇メートル以内に補正する極めて測位精度の高い電波航法システムであり、その規格は世界共通となっています。

―― DGPS局の整備の状況は。

門田 海上保安庁は、平成七年十二月から剣埼(神奈川県)と大王埼(三重県)の中波ビーコン局を利用して各種実験を開始しました。

これらの局は平成九年三月から正式に運用を開始し、平成十年四月に一一局、平成十一年四月に一四局の運用を開始し、現在二七局体制で小笠原諸島など一部の離島海域を除くわが国沿岸をカバーしています。

―― DGPSの原理を簡単に。

門田 正確な位置が判っている場所(基準点)にGPS受信機を設置し位置を測定します。その位置と基準点とのずれからGPS電波の距離測定誤差を算出し、補正データを作成します。この補正データは中波無線局の電波に乗せて送信されます。ユーザーは、このデータを受信して位置の補正を行うことで高精度の測位ができます。

―― 航海システムの中での役割は。

門田 わが国周辺海域における船位不確認とする乗揚げ海難が多数発生していることから、天候に左右されることなく、常時精度の高い測位が得られるDGPSは、これらの海難の減少に効果があるものと考えます。また、電子海図システムと一体的に利用することにより、船舶交通の安全と運航能率の増進に極めて高い効果を発するものと考えます。

―― DGPS利用上の留意事項は。

門田 DGPSは、GPSで得られた位置を補正する機能だけでなく、もう一つの重要な機能を持っています。それはシステムの信頼性を確保するための監視機能です。GPSまたはDGPSに何らかの異常が生じて測位精度が著しく低下した場合、利用者がこれを知らずに利用すると重大な危険が生じる可能性があります。

ディファレンシャルGPSセンターでは、GPS衛星そのものの状況を含むDGPSシステム全体の状態を常時監視しており、衛星あるいはシステムに異常が発生すれば直ちにその情報をDGPS局から放送します。利用者は、受信機あるいはプロッターでディファレンシャルが正常に動作しているかどうか必ず確認する必要がありますが、受信機の機種によって確認の方法が異なりますので、各メーカー等に問い合わせて下さい。

―― 今後の展望を。

門田 四月一日から全国的な運用を開始したところですが、目下当センターでシステム全体のさらなる信頼性の向上と安定運用のため解析を行っています。また、長期的には国際的に検討されているAIS(船舶自動識別システム)と組み合わせて、より安全な航行が期待できるのではと思います。

(四月十五日、聞き手=村上)

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION