磁石が指す北は?
第六管区海上保安本部
「海の相談室」
海図の中に円形分度器によく似た図が描かれているのを見かけませんか?
これはコンパス図と呼ばれ、外側の円は真方位を示し、地球の北を0゜として、そして、内側の円は磁針方位を示し、磁石が指す北を0゜として右周りに角度を目盛っています。このコンパス図は、船の針路を決める際にぜひ必要なものです。
さて、船の方位を求めるのには北極星や太陽の天文観測をする方法がありますが、船のような移動体ではいつも天文観測をしなければならず、また、天候にも左右され実用上大変不便です。船が向きを変えても常に南北を指し示すものが必要です。
これがコンパスです。コンパスは回転しているコマの軸が一定方向を向くことを利用したジャイロコンパスと、紀元前に中国で発明発見され磁石が北を指す性質を利用した磁気コンパスがあります。
ジャイロコンパスは、コマを回転するのに電気が必要だし、装置も複雑で高価です。それに対して安価でいつどこでも簡単に北の方向を指す磁気コンパスは、歴史が古く、十二世紀ごろにはすでに航海に利用され実用の域に達していました。
ところが磁石は、本当の北を指さないのです。本当の北から磁石が指す北の方向のずれを磁針偏差といいます。このずれの量を偏角と呼んでいます。
例えば磁針偏差6°Wというのは、磁石の指す北が、真の北より6°西(West)に偏っていることです。
図は一九九〇年の日本周辺の偏差が等しい地点を実線で結んだ磁針偏差値です。
これによると、北海道の北は約10°W、沖縄の南は約3°Wとなっており、場所による偏角の違いは、南北に7°程の開きがあります。
このように磁石の北が場所によって本当の北を示さないのは、地球の北である北極点と磁石が指す北磁極点とが一致していないことによるのです。
また、同じ地点でも年々偏角の値が西の方に変わっていきます。この偏角の一年の変化量を年差と呼び、図中では年差の等しい地点を破線で表現しています。日本周辺では、年差が1′Wから2′W程度あります。