図1に、串本と浦神の両検潮所の位置を示しました。串本の潮位から浦神の潮位を引いた潮位差は図2のように黒潮が大蛇行するときは値が小さく、しかも、その変動が小さくなります。逆に、黒潮が沿岸よりを流れる場合は潮位差は大きく、しかも変動が大きくなっています。
この現象は次のように理解されています。黒潮の強流帯は約百キロメートルほどの幅があり、この流れが潮岬に接近して流れる場合(非大蛇行型)は、潮岬の先端の串本は黒潮の影響を受け潮位は高めになりますが、浦神はほとんど影響を受けません。
さらにこのとき串本の潮位は黒潮の短い時間スケールの変動を反映することから、潮位差の変動も大きくなります。逆に黒潮が潮岬から大きく離岸するとき(大蛇行型)は串本、浦神とも黒潮の影響を受けなくなり、両者の潮位差は小さくなりその変動も小さくなります。
潮位差への気圧と風の影響については、次のように考えられています。
(ア) 気圧は、直線距離が一五キロメートル程度では影響は少ない。
(イ) 風についても影響は少なく、台風時ですら最大約二日間・一〇センチメートル以内の変動にすぎない。
したがって、串本と浦神の潮位差への気圧と風の影響は小さく、潮位の監視によって黒潮の動向を把握できるとの結論を得ました。
神戸海洋気象台では、黒潮の動向の監視に以上のような研究成果を利用するため、平成四年度から串本および浦神の両検潮所の潮位実況をリアルタイムで監視しており、現在では時々刻々の変化がモニターできるようになっています。
これまでの調査によると、黒潮が潮岬に接近しているときの潮位差は、一〇センチメートル以上の値を示し、黒潮が大蛇行し潮岬沖から離岸しているときは、五センチメートル以下の値を示すことがわかっています。
これらの情報は、神戸海洋気象台から「南日本海況旬報」などで利用者に提供されています。