海の気象
潮位を使って黒潮の動向を監視
林紘二(はやしこうじ)
(神戸海洋気象台海洋課)
本州南岸に黒潮と呼ばれる海流が存在することはよく知られていますが、その流路は大きく変化しています。
潮岬沖から南東へ流れ、北緯三〇度付近まで南下してから房総半島沖へ北上する場合を大蛇行型、潮岬沖から房総半島沖に向けて沿岸より流れる場合を非大蛇行型と呼んでいます(図1)。
この二つの流路はそれぞれ数年にわたって維持されることがあり、どちらも安定な流路と考えられています。また、それぞれの流路への移行は比較的短期間(一カ月程度)に行われます。
この本州南岸に流れる黒潮の動向を知ることは、水産や海運関係者のみならず気候変動の調査・研究を手がける者にとって興味深くかつ必要なものです。
黒潮の動向をつかむための方法は、観測船をはじめとする船舶・ブイの観測・人工衛星から送られてくる画像から判断する方法の他にも、いくつかの方法があります。
ここでは、その方法の一つとして、神戸海洋気象台海洋課で行っている「串本と浦神の潮位の観測から黒潮の動向を監視する」方法(図1)を紹介します。
潮位と黒潮流路の関係について、黒潮の変動および時々その勢力を増してくる遠州灘の冷水域の発達の程度が、和歌山県の串本と浦神の潮位差にあらわれるという調査結果があります。
つまり、黒潮が大蛇行する場合と沿岸よりを流れる場合とで、串本と浦神の潮位差が大きく変動するのです。