しかし、次記する幾つかの点については、さらに検討する必要があるように思える。
1]航海する場である環境と人、または船(機械)とのかかわり合い
2]現状の一般的な操船技術、操船規範との整合性
3]操船者に要求するシステムヘの適応と習熟
現状の船舶の知能化は、計算機に代表される現有する工学的要素技術を船舶に展開・実証することに重点が置かれ過ぎているように思える。操船者の操船技術はどのようなものなのか、操船者が何を求めているのか等の操船者と共生を起点とした操船者に分かりやすい「船舶自体のシステム化」へのアプローチを求めるものである。
(2) 海上交通管制
船舶運航における人と環境(交通・自然)、船(機械)と環境(交通・自然)とのかかわりをシステム化することで効率と安全性を向上させることが試みられている。それは、ヨーロッパで開発され、実用されている海上交通管制(Vessel Traffic Servise=VTS)であり日本においても海上交通安全法を背景とした海上交通センターが実施している。
ヨーロッパには狭い河川港と水門(Lock)に囲まれた港が多く、港内および水門における船舶の滞留防止、港および水門へのアプローチ操船の安全確保を目的として生まれたのが、通航船舶の交通管理を行うVTSである。水先案内との連携、通航船舶への最新環境情報(交通・自然)の提供と指示、通航船舶挙動の監視、事故対応等を行っており、出入港における効率と安全性の向上に大きく寄与している。
VTSの効果はすでに実証され、ヨーロッパおよびアジアの多くの港や狭水道で実施されており、輻輳海域の安全と効率の向上にVTSは不可欠となっている。
日本におけるVTSは、海上交通安全法が適用される輻輳海域における航路の航行管制を目的とし、主な対象は巨大船、危険物積載船、長大物件曳押航舶である。水先案内との連携等のサービスはない。
VTSの目的は、交通流を整理することで通航船舶の摩擦(見合い関係)を減少すること、交通・自然環境の最新情報の提供することによる効率と安全の向上である。
このVTSの本来の目的から日本のVTSの現状を検討すると、次記の幾つかの課題が残されていることが分かる。
1]管制対象船舶種類の増加
2]航路の通航規制から航行管制・情報提供サービスヘ
3]水先案内との連携
4]動静把握対象に小型漁船等を含めるべき