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船舶運航の安全性を確保するには人・船・環境の三要素が個々におよび総合的に適正な機能を発揮することが不可欠であり、現状では、人に負荷が集中し過ぎており船・環境から人への支援、協力の必要性を強く感ずる。

このような考えとヒューマンエラー防止の視点から、工学技術の発展に伴って、船舶運航に関連する自動化、システム化が進められている。

図1は、現在までに実施された船舶運航にかかわる自動化、システム化等について、人・船・環境の要素別に年代を追って示したものである。

図から明らかであるが船自体のシステム化だけが極端に進められており、最終的なシステムとしてのIBS(統合船橋)が提示されている。このシステム化進展の端緒となったのが近代化船プロジェクトであり、船舶運航要員の減少という経済的メリットを目標として進められたことが分かる。この近代化船の経済的メリットの消滅により、プロジェクトそのものが、現在中止されている。

環境におけるシステム化は、海上交通安全法の施行による一部輻輳海域の整流とVTSの設置のみが現状である。

人についてのシステム化は、国際条約としての適用と近代化船プロジェクトに対応した航機両用教育の実施が行われたが、近代化船の経済的競争力の消滅に伴い航機両用教育も廃止された。現在は、STCW95とISMコードが実施されている。

バランスよく進められるべき船舶運航のシステム化において、船のみに集中したシステム化が大きな政策的支援を得て進められ、船員教育システムまで変更させた近代化船プロジェクトは崩壊し、進むべき方向を見失っている状況にも思える。

 

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IBSの例=?トキメック提供

 

図1 船舶運航におけるシステム化の変遷

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