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2]海上実験

実験者Aはゴム合羽とゴム長靴で、実験者Bは青色塩ビゴム合羽とゴム長靴で海に飛び込んだところ、Aは十五秒後に長靴に浸水、四十五秒で合羽内に浸水を感じ、一分三十五秒で浮力維持の限界を感じ実験を終了。

Bは着水後十二秒で合羽内に水が入り、一分三十秒でやや疲れを感じる。浮遊姿勢は垂直で三分三十秒浮遊し実験を終了したが、まだ浮遊の余裕がありました。

 

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プールで浮力実験(根室市温水プール)

 

ゴム合羽と安全衣(救命衣)

 

ゴム合羽とゴム長靴の漁労作業スタイルにベスト型安全衣を着用しての海上浮遊実験は、北海道各地で実施しています。

実験は、多くの場合ゴム合羽にゴム長靴を着用した地元の漁師さんが、ベスト型安全衣を着用して海に飛び込みます。

体重百キログラムの人も五十キログラムの人も、合羽の上に着ても下に着ても、いずれの場合も十分な浮力が示されました。

 

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海中浮力実験(島牧村)

 

まとめ

 

1]衣服や合羽を着て、海に浮いている時間や泳げる距離は、当然のことですが各個人の体力、水泳能力、サバイバル知識によって差異が生じます。

2]ゴム合羽とゴム長靴を着用した状態で海中転落した場合、初めは沈んでも一度は浮上し、数分後には必ず沈むという事実を、漁業者は知識としてしっかり頭に入れておく必要があります。

3]海中転落したら、体温低下を防ぐため合羽、長靴は脱がない方がよいが、着たままでは数分後に沈むので、状況により合羽、長靴は脱ぐ必要があります。

4]水中でゴム合羽、ゴム長靴を脱ぐのは、初めての人は素早く脱ぐことは難しいと考えられますが、訓練によって脱ぐ時間を短縮できます。

サバイバル訓練などに積極的に参加し、実体験することが必要と考えられます。

5]出漁中は、安全衣(救命衣)を常時着用することが最も肝要です。

北の海は厳しく、海水温度が一℃とか二℃とかの海域もあります。

海水温度が二℃以下での生存推定可能時間は四十五分以下です。

このような状況下で海中転落した場合、保温性が生死を左右するといっても過言ではありません。

安全衣を着用することにより、安全衣はもとより、合羽や長靴、着衣も保温の役割を果たし、生存推定可能時間が延長されることになります。

特に安全衣(救命衣)を着用しているという精神的なゆとりが、生き抜くための絶対の条件といえます。

 

 

 

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