本年度の全国海難防止強調運動
テーマ「船舶の点検・整備と航海用機器類の適正な使用」
(社)日本海難防止協会企画部
平成十一年度の全国海難防止強調運動は、昨年増加した海難の状況などを踏まえて、次の実施計画により展開されることとなった。
この実施計画に基づき、中央では「全国海難防止強調運動推進大会」などが開かれるほか、全国各地において、官民一体となっての広報活動、各種行事、安全講習会、訪船指導などが行われる。
以下、実施計画の概要を紹介する。
運動の趣旨
わが国の周辺海域においては、多数の船舶が海難に遭遇し、多くの尊い人命や貴重な財産が失われている。
平成十年にわが国周辺海域において、救助を必要とする海難に遭遇した船舶(以下「要救助船舶」という)は、一、七二六隻で、これに伴う死亡・行方不明者数は一五七人であり、前年に比べると要救助船舶は四八隻増加し、死亡・行方不明者は一三人減少した。
これらの海難の原因は、見張り不十分、気象・海象の不注意等の運航の過誤、機関取扱い不良等のいわゆる「人為的要因」によるものが依然として海難全体の約七割を占めている状況にある。
このため、船舶運航に携わる乗組員はもとより、船舶所有者や運航者、漁業、工事作業、荷役、海洋レジャー等の海事・レジャー関係者、さらには広く国民に対して「海難ゼロヘの願い」をスローガンとして、官民の関係者が一体となって、集中的な海難防止強調運動を展開することによって、海洋における各種活動や海難防止についての理解を深め、また、海難防止思想の普及と高揚を図り、もって海難の発生を防止するものとする。
平成十一年度の重点事項
平成十年の要救助船舶を用途別にみると、平成九年に引き続きプレジャーボート等がワーストワンとなっており、その海難の内容は機関故障が約二割、そのほか衝突・乗揚げを含めると六割を超えている。
さらに、近年、海難の比重が大きくなっている外国船舶(総トン数一、〇〇〇トン以上)を見ても、操船不適切や船位不確認による乗揚げ・衝突および機関取扱い不良による機関故障が際立って多い。
これら機関故障海難は出港前点検、取扱いの慣熟等がなされていれば大部分が防げるものであり、乗揚げ・衝突についても航海計器や操舵装置等機器の整備・使用が適正になされていれば防ぎ得たものが多く見受けられる。
これらを踏まえ、平成十一年度は「船舶の点検・整備と航海用機器類の適正な使用」を重点的に訴え、本運動を実施していくものとする。