<プロフィル>
昭和十一年生まれ、京都市出身
神戸商船大学・航海科卒、昭和三十五年大阪商船?入社、三十九年合併後大阪商船三井船舶?となる。六十二年商船三井客船?に移籍。平成七年定年退職。この間寄港した国・港の数九三カ国二三五港。平成七年八月から現職。
―― 最近の海難発生の状況についてどのように感じておられますか。
澤山 日本の周りをみますと1]太平洋沿岸は世界三大輻輳海域の一つであること2]気象・海象がことのほか厳しいこと3]沿岸には難所が多いことが特徴として挙げられますが、意外に海に関する理解がなされていないと思います。そのことが海難の発生につながっているのではないかと思います。
―― 外国船の海難多発が問題になっていますが。
澤山 われわれはあえて海難予備軍と名付けていますサブスタンダード船が日本の港にある程度自由に入出港しています。諸外国ではこのような船に対し、きびしい態勢で臨んでいます。とくに、諸外国に比べ、強制水先制が不十分であることが外国船の海難多発の要因の一つと考えられます。
先進国では、水先制度・分離通航方式(TTS)・船舶通報システム(VTS)が完備されています。だから諸外国では安心して航海することができるのです。
その他、VHFを聴取していない外国船、海図を持っていない外国船が多いのも問題です。
―― 澤山さんには全国海難防止強調運動実行委員会の委員長としてお世話になっていますが、今年度のこの運動についてどのようにお考えですか。
澤山 ここ二年プレジャーボートの海難がトップを占めておりますが、この点に関して皆さんと考えなければと思っております。
事故例を見ますと、私の個人的な意見ですが、海技免状を安易に与え過ぎではないかと思います。与える以上は、海のルールやマナーを理解し、徹底してもらうしか方法はないのではと思います。
一部の心ない人々が多数の一般航行船舶や本当のプレジャーボート愛好者に大変迷惑をかけている状況です。プレジャーボート所有者は、小型船安全協会やボートクラブなどに入会し、自船・他船の安全を守りつつ快適に遊ぶルールやマナーなどを習得していただきたいものと願っています。
サンフランシスコ港での体験ですが、以前は、沖でパイロット乗船後港内にアプローチし始めると(特に土日)、コーストガードのパトロールボートが本船のエスコートを始め、航路内のプレジャーボート等の露払いをしてくれました。
ところが今日では、コーストガードのパトロールボートは見当たらず、ヨットやプレジャーボートやウインドーサーファーがいっぱいむらがっていました。そこでパイロットに質問しました。
「以前はパトロールボートがエスコートしてくれて航行の不安がなかったが、もしプレジャーボートが突っ込んできて衝突するようなことがあったらどうするのか」
パイロットは即座に「彼らに対して航路筋を航行している船舶を避けることの教育が行き届いているので、パトロールする必要がなくなった。われわれは決められた航路を航行すればよいのです」とのことでした。これはUSAだけではなくオーストラリア・ヨーロッパでも経験したことでもありうらやましいかぎりです。
海を利用する者は、自分たちだけが海域を利用しているのではないという認識が必要です。
―― 東京湾中ノ瀬西側航路に整流用の灯浮標が増設されましたが。
澤山 ルールを理解しない船舶に問題が残ると思いますが、少なくとも今までよりは航行しやすくなり、海難事故も減少することと思います。
(三月九日、日本海難防止協会で、聞き手=村上)