1.3 研究成果のまとめ
1.3.1 研究成果の要約
本年度はフェーズIIの2年目となり、空港用装置の研究、空港機能シミュレーション技術の研究、着陸用計器の研究および環境影響調査研究を実施し、当初の計画通りの成果を得ることが出来た。これらの理論的成果を検証するために、実規模空港モデルを建設して実証実験を実施した。実証実験に供する浮体空港モデルは、昨年度から製作を開始した浮体ユニット6基と係留ドルフィンのジャケット6基を現地設置した。建設工事に当たっては、本研究を通じて開発した種々の工法を活用して、5月13日に現地工事に着手し約3ヶ月の超短工期で空港モデルを完成した。
8月10日にモデルの公開、9月1日に防災拠点実証実験の公開、9月末から低空飛行による空港機能検証試験を実施した。12年度に予定している航空機の離着陸実験を除き、超短工期による空港モデルの建設実証、計器着陸装置の浮体上での機能実証など主要な現地実証実験を完了した。
本年度の研究成果を総括すると、実規模のメガフロート空港モデルに設置された計器着陸装置が約300回の低空飛行調査により、設置海域の調査時の海象条件下において正常に機能することが検証されたことから、メガフロートによる空港施設の中で滑走路については計器飛行が概ね可能であることが実証された。
1.3.2 空港用装置の研究開発
(1) 空港用浮体設計技術の研究
弾性応答を支配する基本因子である浮体たわみ波の波数、弾性モード固有周期及び特性波数について近似理論をベースにこれまでの諸計算の成果をまとめて整理した。
また浮体の応答の評価法の1つとして疲労寿命の評価法を確立し、東京湾奥大型浮体モデルについて適用して200年以上の疲労寿命を有することを確認した。
(2) 低頭拘束型係留装置の開発
係留設計において重要な外力である波漂流力を精度良く且つ簡易に推定するための計算法を開発し併せてチャート化を実施した。
またフェーズII空港モデルの水平変位計測データと予測値の比較・評価を行い、係留設計上の有用な知見を得た。
(3) 鋼製浮体上の舗装仕様の検討
既存の舗装に関する諸基準を調査整理し、浮体上の舗装及び舗装下構造の設計にあたっての基本的な考え方を提案した。
(4) 浮体上の管制塔構造の開発
これまでの研究では規則波中の挙動特性に限定されていたが、本年度は独立型塔状管制塔を対象として実海面での不規則波中の挙動予測と陸上管制塔との比較評価を行い、浮体上でも陸上管制塔と同等の居住性能を持つ管制塔設計が可能であることを示した。また浮体と管制塔の接合部構造の検討を行い管制塔重量に耐える浮体構造の形状を提示した。