5.4 旅客流動の影響と利用者の視点からの評価
5.4.1 概要
列車に遅れが生じたとき、旅客が停留所に貯まり、その旅客の乗降によって、停車時秒が延び、益々、列車の遅れが増大する現象がある。また、新しいシステムの性能を評価するとき、事業者や管理者の立場からの検討が多く、利用者の立場に立った評価が忘れられがちである。そこで、利用者の立場に立って、旅客の流動の影響による評価を加味して、LRVの運行状況シミュレーションを実施し、LRVの高速化、高加減速化の特性や提案の信号システムの評価を図ることが本節のシミュレーションの目的である。
本シミュレーションにおいては、旅客は各停留所に一様に到着するものとして、その旅客が各停留所に集合する状況と、列車に乗車している乗客が各停留所で降車する状況をモデル化し、一人当たりの乗降に要する日間を都交通局荒川線の調査データを基に定数化し、それによってその停留所の停車時秒を可変し、列車の運行状況をシミュレーションする。
列車には予め、遅れ時分を与え、その遅れの回復、または増加の状況、列車に乗車中の旅客数(これを通過人員という)等を追跡し、旅客の立場からの評価因子として、混雑率および損失時間を算出して、LRVの運転状況の評価を行うものである。
5.4.2 旅客の一様到着モデル化と評価因子
(1) 設備状況と交通信号との関係
停留所位置、交通信号機位置等、線区の設備モデルは、交通信号の場合と同様とするが、このシミュレーションでは専用軌道の場合と同様に、交通信号の影響は受けないものとする。なお、旅客流動と交通信号の両者の影響によるシミュレーションは、次節で論ずる。
(2) 乗降パターンの設定
各停留所の乗降のモデルは次の2パターンを考慮する。
1]乗降パターンa
第一のパターンは、両端の停留所に乗降人員の多い乗換駅があるものとした。そこで、中間停留所の乗降人員は余り大きくないものとしてモデル化した。その乗降人員のパターンを図-5.4.1に示す。なお、この乗降パターンを乗降パターンaと称する。
図-5.4.1においては、上りのパターンを示しているが、下りも上りと同様に対称的な乗降人数としている。
2]乗降パターンb
他の一つのパターンは、中間に乗換駅等の多客停留所を有するパターンで、DとHの停留所が多客停留所としてモデル化したものである。その乗降人員のパターンを図-5.4.2に示す。なお、この乗降パターンを乗降パターンもと称する。
図-5.4.2も上りのパターンを示しているが、下りも上りと同様に対称的な乗降人数としている。
(3) 車両定員
車両は、都交通局荒川線の車両の定員をイメージし、定員64名とする。