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(3) 併用軌道におけるLRVの運転は目視運転が基本である。従って、在来の鉄道信号システムのように機器自体にフェールセーフ性を持たせていないが、高速進行信号は、車上で要求してセンタで判断した結果が車上に戻ってきた際、すなわちシステムが全て健全な時のみ有効とし、また、GPS受信不良時には、停留所間在線情報を安全側情報である車両在線状態に固定するなど、システム的に安全性確保に配慮した構成としている。しかし、LRT高速運転用信号システムの実用に際しては、改めて、安全性の整理が必要である。

(4) 海外におけるLRVは、80km/h程度の高速走行性能を有しているが、シミュレーションでは60km/hまでの速度と、それに対応した加減速度により評価した。しかしながら、「LRT高速運転用信号システム」の実用に際しては、最高速度をどの程度にするか、さらに高速運転のための問題点の抽出やその対策の具体化などの十分な検討が必要である。

(5) LRT高速運転用信号システムの実用上の諸問題を確認するため、シミュレーションにより評価を行ったが、今回のシミュレーションモデルは、系統制御方式の交通信号機を対象としたものの、直線のみで実線区を対象としたものではない。従って、本シミュレーションの検証には、モデル化可能な実線区で整合性を検討する必要がある。

 

1.4 開発の効用

 

本事業で開発された「LRT高速運転用信号システム」には以下に示す効用が期待される。

(1) 速達性

安価に併用軌道における走行速度を高速化し、さらに、本システムを利用した交通信号機との連動による電車優先信号化が実現されれば、より速達性が向上する可能性がある。

(2) 利便性

出発抑止機能による等時隔運転の実現や高速化によるダンゴ運転の解消等が可能となる。また、各車両走行状態の正確な把握から、停留所における的確な案内表示が実現できるなど、乗客に対する利便性が格段に向上する可能性がある。

(3) 導入の容易性

本システムの実現に際しては、汎用GPSや特定小電力無線機等、構成機器に安価なものを採用し、また、車両の改造を不要にするなど、経済性を追求している。従って、システム導入が極めて容易である。

(4) 運転整理

本システムの導入により、運行管理センタにおいて従来とは異なる各車両の走行位置や運行管理状況の把握が可能となる。その結果、簡易な等時隔運転やダンゴ運転の防止方策が可能となり、運転整理上の効果が期待される。

(5) LRV導入の促進

LRVは優れた走行性能を有しているが、本システムの導入により、それらの性能が十分発揮されることで、速達性、利便性が向上する可能性があり、さらに運転整理の上からも効用が期待される。その結果、LRV導入の促進が加速されるものと期待される。

 

 

 

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