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バス、タクシーはなく、徒歩、バイク(50cc)、自動車(数は少ない)が主な交通手段であります。魚や野菜は島でとれる物もありますが、食料品のほとんどが日本本土からの輸送に頼っております。テレビは、NHK、民放が有料で受信できますが、ラジオはほとんど受信できず、新聞は約1週間分まとめて、船の入港日にあわせてしか届きません。クリーニング店はなく、床屋は1、2ヵ月に1度、父島から出張で散髪に来る床屋さんがいます。

母島診療所は、平成6年4月に新築された建物で、とてもきれいで快適であります。診療科目、医科全般と歯科で、スタッフは医師1名(都からの派遣医)、看護婦2名(村職員)、歯科医師1名(委託)、歯科衛生士1名(委託)、受付3名(臨時職員)であります。診療所には、単純X線装置、透視装置、自動現像機、血液検査器械、超音波検査装置、上部消化官内視鏡、オートクレーブ、聴力検査機器、呼吸機能検査機器等があります。

小さな島のわりには施設が整っているという印象を受けましたが、交通の便などを考えると、島民の命を預かっているのですから、それぐらいは必要だと思われます。父島診療所にもCTがないので、CT撮影が必要な患者さんは、2日かけて東京まで行かなければなりません。

何と言っても困るのが、急患がでたときです。島内では対応出来ない重症患者は内地へ搬送しなければなりません。輸送方法は2通りあり、それほど緊急を要しない場合には、ははじま丸とおがさわら丸を利用するのですが、約30時間という長い時間、ほとんど医療行為ができない船に乗せるわけですので適応には限りがあります。

それ以外の時はすべて自衛隊の協力のもと、ヘリコプターと飛行機で内地の病院に搬送します。搬送経路は、母島から硫黄島までは自衛隊ヘリコプターにて、硫黄島から羽田空港まで自衛隊機(P3C、US1)にて、羽田空港から救急車で収容病院へが標準的です。搬送時間はまちまちですが、要請してから病院に収容されるまで、早くても約8時間はかかります。搬送には必ず医師が添乗しなければならないので、硫黄島までは自衛隊の医務官が、また硫黄島から病院までは内地の添乗医師が同行協力してくれます。

このような超遠隔離島であり、日本一の僻地と言っても過言ではありません。父島、母島の近辺に空港が整備されればたいていの問題は解決され、他の離島と大差なくなると思われますが、空港ができるまで、早くて10年と言われています。しかし、空港がない故に、美しい大自然が守られているのも確かだと思います。島の人たちは、医師が1年毎に変わってしまうのではなく、島に長く留まることを希望しています。この研修を通じて、僻地医療の重要性、大変さを体験し、認識する事ができ、とても有意義な10日間でありました。

 

 

 

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