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寝付けないときに飲むと眠れるというので、「老人ネットワーク」により広まったらしいが、今では疲れたときなどにも飲まれている。新城先生も量を減らそうとしているがなかなか難しいらしい。

そして、私の滞在した期間は例年にない寒さ(約10℃だが)で風邪の人も多かった。熱・咽喉痛・咳・痰の小学生や高齢者が日に数人来た。小学生に対しては、先生自らがレントゲン装置を使って胸部X線像を撮り、さらに現像までやっていた。また、痰が出る高齢者に対しては、その痰をシャーレに取り、グラム染色して「肺炎双球菌疑い」として八重山病院に検体を送っていた。これらについてすごく驚いた。大学病院では、胸部X線像はX線技師が、細菌検査は臨床検査部がやってくれるが、僻地ではまず医師が一人で行い、さらに診断せねばならない。さらに、ちょうど砂糖きび刈りの季節だったので、それに伴う腰痛や眼内異物や手指膿瘍の患者も数人いた。

また、この島には寝たきりの老人が2人いた。その一人の家に先生と胃ろうのチューブを交換にうかがい、僕は初めて寝たきり老人を見た。その人は口を開けて首を振ってずっとうなっていた。そして、ガリガリに痩せて、皮膚はうろこ状で、異臭がした。このミゼラブルな姿にショックを受けた。しかし、この家族は介護には積極的であった。ちょっと前に家族が全く介護をしない寝たきり老人がいて、体重17キロで亡くなった、という話を先生から聞いた。老人が「島で死にたい」と思っても、家族の協力が不可欠だ。家族を説得し、ちゃんと介護させる、というのも離島の医師の役割のひとつである。

もう一人の家には、この島のヘルパーさん2人とおむつ交換に行った。そのおばあちゃん仲本時さんは100歳で、その人を70歳のおばあちゃんが世話をしている。時さんは痴呆で同じことを繰り返し言ったり、体を動かすと「年寄りをばかにしている」と怒ったりとヘルパーさんも大変そうであった。

この他、波照間小学校と中学校の保健の先生(養護教諭)に学校保健について話を聞きに行った。また、医療とは違うが、島のバドミントンサークルや青年会のクリスマスのプレゼント配りに参加させてもらって、島の生活というのを味わうことができた。

最後に、このような大学病院でのポリクリでは決して知ることの出来ない貴重な機会を与えてくださった全国自治体病院協議会と波照間診療所の新城先生、村上さん、貝盛さんとヘルパーの屋良部さん、玉城さんと波照間島青年会の皆さんに感謝いたします。

 

 

 

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