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医療の現場にふれて

 

長野県・信州大学医学部4年生

加藤るり

 

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離島の診療所って何だろう。それが最初の疑問でした。私が育ったのは衛生都市。医療過疎地という言葉の実際を知りません。

診療所で実習を受けてみて、医療機関のなかで生身の人間に初めて触れることができました。普通に生活している人が、診療所にくるだけ。医療機関に来ているからといって、何か特別な人というわけではない。その辺にいる普通の人だと実感しました。

能登島は、離島とはいっても無料の橋が開通しています。大きな病院に行きたい人は、橋を渡って、七尾という町にある病院まで行かれるそうです。能登島の診療所は離島の診療所というより、開業医のような、地域にある気軽にかかれる診療所としての側面が強いようでした。いわゆる離島の診療所、周囲に他の大きな病院のない地域の診療所で求められる医療は求められていないそうです。その土地その地方により、医療機関に求められる役割がちがってくると知りました。また、大学病院で行われる治療を必要とする人、一般総合病院での治療を求める人、それぞれに合わせてそれら医療機関にいる医者の役割が変わってくると知りました。

 

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私は、診療所で診察に同席させてもらい、また、併設されているデイケアセンターで実習をしました。

診察に同席するなかで、診療所に来る患者さんの訴えを初めて聞きました。大学の講義のなかにも、実際の症例を用いるものもあります。が、患者さんの訴え、つまり主訴や所見はすでにスライドやプリントに整理して記載されています。患者さんにしゃべってもらって主訴を聞き出し、診察や検査で所見をとるという手順を見たのは初めてでした。自分が病院に行ったことはありますが、患者さんの話を聞く側にたったことはありませんでした。患者さんが何を心配して診療所に来ているのか、患者さんはどうしてほしいのか、何を求めているのか。どういう症状を感じているのか、その症状からどのような事が考えられるのか、診断や治療のための情報を得るためにどういうことを質問するか。そういったことを知るために診察はあるわけですが、それを見ることが出来ました。

また、大学病院(特定機能病院)で扱う症例は、特殊なあるいは重篤な症例が主です。授業で実際の症例について説明や解説を受けると、そのような疾患が主になります。逆に、日常ありふれている病気を珍しく感じました。この世の中にある「病気」は、何も教科書に長々と記載されている難病ばかりではないことを思い出しました。

 

 

 

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