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礼文島での診療所研修レポート

 

秋田県・秋田大学医学部5年

川島佳

 

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私はまだ学生なので、研修といっても直接患者さんを診察することはなく、先生の診察を見学させていただきました。

礼文島は北海道最北の有人島で、人口は4千人弱、主幹道路は1本で端から端まで20km程度の小さな島です。病院はなく、診療所が島の北と南に1つずつあり、医師はそれぞれ2人と1人ですが、南の診療所は日曜祝日は休診なので、急患は北の診療所へ行くようです。

私が研修させていただいたのは、北にある礼文町国保船泊診療所です。2人の医師のうち、1人は礼文島出身で診療所の所長をされている升田先生、もう1人は升出先生の母校である秋田大学から2ヶ月交代で島に来られる先生です。私が研修に行った時は、2ヶ月ローテーションの吉岡先生と、院長先生が不在のため代わりに来られた同じく秋田大学1外科の浅沼先生の2人でした。院長先生は1年365日のうち358日は島にいらっしゃるそうです。診療所の向かいに宿舎があり、2人の医師と看護婦が住んでいます。必要があればいつでもすぐ駆けつけられるわけです。

 

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診療所には他に看護婦13人、薬剤師1人、放射線技師1人と事務の方々がいます。

診療所で検査できるものはレントゲン、エコー、CT、胃カメラ、尿、血液ではCRP・WBCです。

仕事の流れとしては、午前中は外来、午後は主に入院患者の処置や往診です。往診は一般家庭の他に老人ホームにも行くそうです。診療時間以外にも医師は携帯電話を持ち、交代で緊急に備えます。私がついた浅沼先生も、夜飲みに連れて行ってくれましたが、オンコールの番だったため、シャツにネクタイのまま、お酒も控えられていました。

診療所の看護婦さんはやはり礼文島出身で、24時間交代、長い時は朝来て次の日の夕方帰る、などということもあるそうです。ほとんどが准看護婦だそうです。

町民に配布される町の行事カレンダーがあり、それによると定期検診(胃がん・乳がん・子宮がん・大腸がん・肺がん・結核)や予防接種(3種混合・麻疹・風疹・ツベルクリン反応・BCG・ポリオ)も行われているようです。

診療所では昔は出産もあったそうですが、今は妊婦さんは稚内の病院ヘフェリーで日帰り通院し、1、2ヶ月前に入院するそうです。

救急患者は、自衛隊などのヘリコプターや船で稚内・札幌の病院へ搬送されます。離島での輸血の論文1)に、緊急に輸血を要する場合は、島の中で供血者を募り、交差適合試験の後全血輸血するので、血液を介した感染も多かったということが書かれていたのを思い出し、そのことについても聞いてみました。礼文島でも同じ状況だということでした。

 

 

 

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