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へき地医療の体験実習について

 

滋賀県・滋賀医科大学6回生

八木勇紀

 

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今回の実習では長崎県五島列島の久賀島にある久賀診療所を訪問した。実習内容としては、診療所での実習および往診について行った。たった3日間しかなく、稲刈りの時期と重なっていた事もあってか、1日の患者さんの数はそれほど多くはない時期となってしまった。

患者さんは人口の40%が御老人という事もあって、ほとんどが高齢者であった。ただお盆の時期という事もあってか、里帰りしている子供の患者も何人かはあった。離島という事で、人口も減っている上に高齢化も進んでいるようではあった。そういう意味では、往診も患者さんにとっては非常にありがたいサービスの一つであると身を持って感じた。患者さんも非常に感謝しておられるようで、やりがいがあるなと感じた。

また、久賀島では唯一の医療機関という事で、島の人々にとっては非常に重要な役目をになっている上に、島の人々の信頼も厚そうであった。島の人々がほぼ全員顔見知りという事もあって、待合室の雰囲気および診療時の雰囲気が非常によかったのが特に印象的であった。ただこれは、医療においては問診が重要である事を考えると、非常に大事な一面であると思われる。普段から島の人々と接していればいるほど、患者さんの事がよく分かり医療もスムーズに行えると感じた。また、地元のことをよく知っている看護婦さんの存在が非常に心強く感じられた。都会と違い患者さんにとってはかかりやすそうな医療機関であった。

 

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実際に行われている医療行為は、普段見ている大学病院などの医療行為と比べると、当たり前ではあるが非常に大きな違いがあった。血液検査のデータやCTやMRIなどの画像を非常に頼りにしてしまっている僕たちの世代では、本当にこのような場所で医療が行えるのであろうかと心配になってしまう。そういう意味で、問診・視診・打診・触診・聴診から診断および治療を行っていく医師に対して非常に大きな魅力を感じた。また、そういう昔ながらの医療というものに対して改めて魅力を感じた。しかし、実際にこのような離島で医療を行うとなると、非常に多くの知識と経験が必要であるとも感じた。

ただ、僻地といえども情報化の波は押し寄せてあった。ただ情報化は僻地医療に対しても非常に大きな利益をもたらしているようであった。僻地の医療では情報が入りにくかったり、情報交換が行いにくいという先入観があったが、インターネットを利用すればそれほどの情報不足には陥らないと感じた。今の時代、日本中どこにいても情報が入りにくくて困るといった事はないのではないかと思った。

今回は先生の官舎で寝泊りし、いろいろなお話を聞く事ができた事が、僕にとっては一番の収穫だったかもしれない。

 

 

 

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