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この事業を利用された医師・医学生の報告書

 

へき地・離島医療を体験して

 

大阪府・大阪市立十三市民病院長

三島紘一

 

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はじめに

僻地で働くには何が必要か、都会の医療との違いは何か、双方を比較することで医療の根幹が見えてくるのではないか、と、大それた夢を抱いてみました。

 

現状

今回訪れたのは隠岐島の島前(どうぜん)3島のうちの西ノ島と知夫里(ちぶり)島で、医療状況は思いのほか整備されているというのが第一印象でした。西ノ島は人口4千強で島前診療所(19床)と浦郷診療所(無床)、知夫里島は人口7百で知夫診療所(無床)を開設し、全国に百数十ある離島のなかで整備順位から云えば10番目くらいという話にも首肯けます。

 

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両島とも老人王国であり、西ノ島の65才以上は30%を越え、知夫里島にいたっては40%とのことです。しかし、見受けたところ外見上障害をもっている人は意外に少なく、80才を越えた方でも単車や乗用車を運転されており、この活力が生活の基盤となっていることは間違いありません。ただ、道は大半整備されていますが、一部狭いところもあるだけにスピードをだせず、接触事故はあっても入院するような人身事故はほとんどありません。そして死亡事故(ただし運転中に心筋障害 ?)は数年前の1件だけとのことでした。

浦郷、知夫診療所はそれぞれ1名の常勤医師を含め、3診療所で計8名の常勤医師(内科、外科、小児科)を抱えており、大学や診療所間と定期的な交流をはかることで、個人の技量や医療の質の向上に努力されておられます。また夜間、休日は島前診療所のみですが、8名の医師が交替でオンコール体制をとっています。その他の眼科、耳鼻科、産婦人科、精神科は1-2週間に1度の外来診察があり、時に要請があれば往診もしておられます。整形外科がない以外、一般の総合病院とほとんど遜色ないまで機能しているといえます。計5台の超音波器、6本の上部内視鏡、2本の下部内視鏡、テレビX線装置1台を備えており、ほとんどの疾病に対応可能です。

平成12年になると、介護保険関連で療養型病床群24床を増築し、計43床の病院に昇格します。そのうえCT装置や画像伝送システムも設置する予定とのことで、ますます充実することは間違いありません。ただ増床しても看護婦を集めることが可能かどうか不安視されております。

 

 

 

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