日本財団 図書館


20年という全域整備目標年次(5年毎に見直し)の他に、重点地区では、今後のまちづくりのタタキ台となる整備イメージ(整備計画)、10年間の積極的な事業展開期間の設定、不燃領域率による整備水準が提示され、いわば“投げたボールを自分で取りに行く”という縛りが掛けられている。

不燃領域率:Fは、都市防火総プロで提案された指標である。概ね100haという都市防火区画内の空地(概ね1,500?以上の空地と約6m以上の街路)と耐火建築物面積の平均的な比率によって示され、70%以上だと数棟レベルで自然鎮火、50%以上では自然焼け止まりが期待できるとされていた。「防災都市づくり推進計画」の策定にあたって、東京都は、空地と街路幅員の基準を緩和した不燃領域率:Ftを新たに定義した。前述の「“投げたボールを自分で取りに行く”という縛り」は、重点整備地域内で「概ね10年以内に不燃領域率を40%以上とする」というものである。

不燃領域率:40%という目標値は、一定の気象条件以下ではある程度の延焼不拡大は期待できるものの、延焼の進行を緩やかにし、消火活動等の展開を有効にしようとする水準である。したがって、大規模地震によって、常設の消防力を大きく上回る同時多発火災が発生し、周辺住民や消防団による適切な消火活動がなされない場合には、阪神・淡路大震災程度の火災被害はやむを得ないものと覚悟すべき目標値である。と言っても、人口規模や建物棟数によって単純に置き換えると、数万棟の焼失という大規模な火災被害となってしまう。

 

4. 災害に強いまちづくりへの住民参加の期待と課題

阪神・淡路大震災では、10日間にわたって285件の火災が発生したが、原因が特定されている出火のほぼ半数は電気関連であった。発災が早朝であったにもかかわらず、電気こたつや電気炊飯器の使用率は10%を超えており、電気ストーブや電気こんろを除いて、発震後しばらくの間にスイッチが切られた電気器具はほぼ半数であった。

電気器具からの出火は「ノースリッジ地震」で顕著であり、阪神・淡路大震災の約3週間前の「三陸はるか沖地震」で被災した八戸市でも発生していたが、一般住民への指導は徹底されていなかった。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION