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教訓その9 災害時にラジオは有効である。しかし、マスメディアによる災害報道から防災報道への質の転換が求められる。

理由はともかく、あらゆる要請に4時間の空白という無駄があった。兵庫県知事の自衛隊派遣要請、神戸市消防局の消防応援要請、ヘリコプターによる被害把握、首相への災害報告などにことごとく4時間の空白がある。このような初動態勢の遅れが、被害の拡大につながっていることは明らかである。トップが意思決定できないのみならずその下の実務者が、災害時にどのように責任を取ればよいのかわかっていない場合が多い。また、知事や市長、企業の社長など組織のトップは、最悪の場合を想定して徒歩で30分以内の場所に居住していなければならない。わが国の大半の自治体では、過去20年以上にわたって住民に避難勧告を出した経験がない。1998年と99年に全国各地で起こった浸水・氾濫災害で、避難勧告が出せなかった事例、出しても、避難に何の役にも立たない直前の発令の事例が多かった。氾濫の場合、浸水が始まる1時間以上前に避難勧告を出す必要がある。5分や10分前では論外である。

教訓その10 発災後の空白の4時間を短くする。

自治体職員の一人一人が災害時に何をやるべきかをはっきりと知って、その訓練と評価を日頃の仕事を通してやっておくことである。マニュアル人間になってはいけない。納税、建築申請、住民票の発行などの日常業務にパソコンを導入し、たとえば、仮設住宅の抽選<や罹災証明の発行時などに利用して、被災者を事あるごとに役所に呼びつけないことである。

教訓その11 自治体職員は災害時に割り当てられた仕事を行い、かつ柔軟に対応する能力を身につける。

このようなことを全庁的に実施するには、少なくとも防災専従の職員は、人口10万人以上の都市では必要で、防犯や交通事故対策との兼業は避けなければならない。また、この仕事内容の高度の専門性から、できれば在任期間が10年以上で、その間人事上の不利益を被らないような工夫が必要だろう。

つづいて、

教訓その12 諸外国からの人命救助を目的とした援助は断る。

地震災害での人命救助は、わが国では初日が勝負である。海外からの派遣は初日は無理である。したがって、先方の国がパフォーマンスとして望まない限り、これを断ることが被災地には役に立つ。阪神・淡路大震災の場合、本国の救援隊派遣を在日大使館が強行した例が報告されている。

 

6.3 災害医療

兵庫県南部地震による、被災者の死亡推定時刻に対する神戸市観察医検案分の2,416体のうち、午前6時までのおよそ15分以内の比率は90%を超えている。このように、犠牲者の大半は即死であった。しかしながら、災害医療の充実によって、確かに生存できた犠牲者もいたことは事実である。そこで、つぎのような教訓が得られている。

 

 

 

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