6. 直接対応時の教訓
人命救助につづいて重要となる課題は、発災直後にとくに人的被害をさらに増大させる可能性のあるものと、それに関係するものであろう。約1日以内の直接対応の時期には、つぎのようなものが挙げられる。
6.1 二次災害の防止
二次災害としては、地震の場合火災であり、プレート境界地震であればさらに津波の発生が懸念される。そこで、つぎの教訓が浮かび上がる。
教訓その6 老朽化した家にそのまま住み続けるかぎり、次の地震では阪神・淡路大震災と同規模、それ以上の犠牲者が発生する。耐震補強を公的資金で実施しない限り、決して自己負担で行われないことがはっきりした。もし、建て替える機会があれば、耐震性と不燃性を設計条件に入れる。
いますぐ直下型地震やプレート境界型地震が起こるわけではない。木造家屋は必ず立て替えの時期が来るので、そのときに税制などによる公的な補助を導入して耐災性の向上を図る。このような継続的な施策が長い目で見て災害に強いまちを実現する。
教訓その7 津波は既存の護岸や防潮堤では守れない。逃げるが勝ちである。
居住地域での津波の到達時間は、震源の位置によって、津波の大きさはそれと地震マグニチュードによって変化する。したがって、想定外の津波を考えると早く逃げなければいけない。気象庁の警報を待っていてはいけない。臨海部で立っていられないほどの揺れが1分以上続いたら、津波が襲ってくると反射的に考えよう。これからの高齢化社会では、高齢者は安全だが遠い避難所への避難も、近くの鉄筋3階建て以上の建物へ上ることも非常に時間を要したり、不可能な場合がある。どうすれば助かるかを自分が考える必要がある。それから、津波、高潮、洪水によって水没の危険がある地下街や地下鉄から通行人や乗客は早く地上に上がり、避難しなければならない。
教訓その8 地震時に広域火災が起こらない限り、河川敷に避難しない(広域避難場所)。
津波は河川を遡上し、大きければ河川敷も水没する。したがって、ここへは避難してはいけない。津波到達時間があらかじめわかっている場合には、広域火災で一時的に避難しても、できるだけ速やかに立ち去ることを心がける。
6.2 概括災害情報の共有と職員参集・救助活動
阪神・淡路大震災後に、都市地震災害では情報が被害の大きさを左右することがわかった。そのために、自治体では被害推定システムの導入などが図られている。しかし、ハイテクのみに依存する災害対応は脆弱である。ローテクとの共存が必要である。防災無線の整備も図られているが、無線機の落下や無停電装置の併設、電池の交換などの対策も平行しなければならない。ラジオは、被災者の生命を助けることができる。各地の震度などの地震情報や被害情報の繰り返しで構成された報道番組は、発災直後の被災者に何の役にも立たない。被災者の情報ニーズの時間的変化などに対応した防災報道が望まれる。