しかも、自前で被害想定できる能力は低く、単なる出動要請を受けても、肝心の被災情報が共有化されないとどこへどの程度の規模の救援を行うべきかを決定できない。また、派遣先でどこを拠点にできるのか真剣に手を打っておく必要があろう。何しろ、あらゆる学校が避難所になっており、それ以外の空地をもっている公的な施設はごく限られているからである。
2) ヘリコプターをはじめ300機近い自衛隊機が動員予定であるが、被災地上空で民間のヘリコプターや航空機を自衛隊が責任をもって(まさか警察が自衛隊のヘリコプターを統制できるとは考えられない)一元管理・統制する体制が整備されていない。昨年のドイツの高速列車事故では、ドイツ軍のヘリコプターが事故現場ですべてのヘリコプターを管理した。直後にはマスメディアのヘリコプターは現場から半径2.5km、高度660m以下の空域への進入を禁止された。
3) 東海・南海地震とその津波災害の場合、地震発生後かなりの期間(津波については少なくとも半日以上)陸路と海路が使用できない。大規模地震対策特別措置法が20数年前に施行されたのは、地元の被害の大きさもさることながら、東海地方が首都圏のアキレス腱であり、首都圏の被害も非常に大きいと予想されるからである。したがって、仮に東海・南海地震災害が発生した場合、首都圏も被災するから、まず首都圏の救命・救援が先行され、その分、広域災害への対応は極めて遅くなる恐れがある。
このように考えると、トルコの地震災害で何を調査すべきかがわかってくる。
5. 人命救助の教訓
震災後に自治体等が最大限にかつ速やかに努力が払われなければならないのは、人命救助である。何度も指摘してきたように、神戸市消防局のレスキュー隊が、地震後1週間でガレキの下から救出した人数とその生存者と死亡者の人数の関係から、その緊急性が理解できる。わが国の過去の震災では、木造家屋の倒壊が圧倒的であり、その下敷きになる場合は、24時間以内(実際は1時間以内に)に救出されなければ駄目である。そこで、
教訓その1 地震後24時間以内の早期救出が、わが国では生死を分かつ。
阪神・淡路大震災の被災地全体で推定約3.5万人がガレキの下から自力で脱出できずにいたが、その約80%弱は隣近所の人たちによってなされており、しかも生存率は80%に近い。消防、警察、自衛隊は合計7千8百人しか救出しておらず、生存率は50%を切っている。したがって、
教訓その2 地震災害で人命救助の主役は隣人である。
地震直後にまず必要なものは、食料ではない。被災地では4日目からかなり順調に食料と水は供給されている。また、自治体の職員らも人命救助を最大限支援する必要がある。健常者は、食事を1日とらないからと言って、死にはしない。がまんすべきである。自治体の備蓄の基本は、救援活動をする人たちのものである。2日目は大手スーパーとの事前協定に基づく流通在庫を活用すればよい。