日本財団 図書館


4. 土砂災害危険の接近状況を把握する2つの方法

「A-2」のシステムでは、土砂災害危険の接近状況を把握する(土砂災害の発生危険を予測する)ことが重要になります。土砂災害危険の接近状況を把握する主な方法として、次の2つがあります。

 

(1) 前兆現象から発生危険を予測する

崖・山くずれや土石流が発生する場合、前兆現象が現れることがあります。たとえば、「崖に亀裂が入る」、「降雨が続いているのに渓流の水位が急激に減少する」、「木のさける音がする」といったものです。この種の前兆現象にもとづき発生危険を把握しようとするのがここで述べる方法です。この方法は、前兆現象の直接的な観察によるため、土砂災害の発生危険を具体的に知ることができるという点に特徴があります。

しかし、この方法は次のような問題を抱えています。

1] 崖・山くずれや土石流では、前兆現象が現れるとは限らない

2] 仮に前兆現象が現れたとしても豪雨の最中あるいは夜間に防災関係者や住民がそれに気づくのはきわめて困難と考えられる

3] 運良く前兆現象に気づいたとしてもその時は危険は目前に迫っている

このことから、防災関係者や住民が前兆現象の現れについては十分に注意を払い、それを発見したときは緊急に避難させる(する)などの対応をとることは重要ですが、「安全確実な避難」を目標とするならば、この方法は不適当であるといえます。

 

(2) 雨量から発生危険を予測する

土砂災害の発生に雨量が最も影響することは、これまでの土砂災害研究で明らかにされているところです。また、雨量から土砂災害発生危険を把握する研究の中には既に実用的な水準に達しているものもあります。

この方法では、雨量をベースに土砂災害の発生危険を予測するため、以下のことが可能となります。

1] (1)の方法が抱える問題を解決できる

2] 「安全確実な避難」の可能性が飛躍的に高まる

3] データが得やすい

4] 土砂災害発生危険をある程度ランク分けできるため、ランクに応じた活動内容・体制をとることが可能となる

今回開発した「土砂災害危険予測システム―広域運用システム―」は、雨量情報の前述のような有効性を最大限に生かし、市町村、消防本部などの防災関係者の警戒避難活動を強力に支援します。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION