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海南市消防本部 (和歌山)

 

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当本部は、和歌山県の北西部に位置した単独消防本部である。

海南市は美しい山と海に囲まれ、万葉の昔から多くの歌人達によってうたわれた風光明媚な地として知られ、平安時代の院政期以降は、京の都から往復一ヶ月をかけて参拝する「熊野詣」の要衝の地として賑った。また、近世になると漆器・和傘・しゅうろ・塩などの特産品の誕生がこの地に繁栄をもたらし、今日では、伝統ある漆器の他、日用家庭用品・家具・縫製等地場産業と電力・鉄鋼・石油などの基幹産業とが調和し、古さと新しさが融合した都市を形成している。

昨今は、阪和自動車道の整備及び関西国際空港からは三〇分程で結ばれ、近畿圏の国際的な未来都市への発展が期待されている。

明治二七年五月の消防組の設置を起源とする当本部は、昭和二四年三月にそれまでの消防団常設部に代わり発足、現在では一本部一署一出張所、六七名の職員と、一消防団一〇分団、四五六名の団員が管轄面積六一・三五平方キロメートル、人口約四万七千人余の安全・安心を担っている。

 

★漆器作業場での出火が多発

国の伝統工芸品にも指定された当地の「紀州漆器」は、江戸時代の寛永年間より全国的に知られ、以来日用品として需要が増加した。

このような時代背景の中、当本部管内の黒江地区では、昭和三〇年代には漆器工場から民家に延焼するという火災事例が相次いだ。原因はいずれも漆器塗料の廃粉が自然発火するという極めてまれなものであったが、今日使われている塗料は、品質も当時のものとは代わり、以来このような火災は発生しなくなったという。

 

★二一世紀に向けて安心して生活のできるまちづくり

平成一一年四月には、市の防火防災の拠点となる最新の消防緊急通信指令施設を備えた新消防庁舎と市民が気軽に防災思想について学習でき、地震・台風等自然災害時の一時避難所としての機能も備えた防災センターが完成、市全体としての防災活動能力は大きく向上した。これにより、消防行政需要に新たな展望が開かれ、市民より消防に対する一層の厚い信頼と期待が寄せられている。

当本部としても、目前の二一世紀に向けて、防災体制の充実強化を図り、あらゆる災害に迅速かつ的確に対処し、市民の負託に職員の総力をもって応えることが、より安全な地域社会づくりにつながるものととらえ、住民生活の基盤となる「安心して生活のできるまちづくり」を目標に掲げ、事業を推進するとの考えでありました。

 

★防災フェスティバルの開催

職・団員、交友会(消防管理職OBと団副分団長以上のOBで構成)、婦人消防隊が一体となり、地元企業の協賛のもと、昭和五八年から農業まつりと共催で実施している。今回もはしご車の試乗や地震体験の他、防災相談コーナーを設け、日常での防災に関する疑問にお答えするなど、防災意識の高揚に大きな成果を挙げている。

 

★「和(わ)をもって貴(とうと)しとする」

大上消防長は、消防は二一世紀に向けて従来の消火活動を中心とした体制から大きく脱皮を図り、新時代には予防災害・予防救急を主眼として取り組む必要があり、「市民誰もが消防人」と位置づけ、市民一人ひとりが「自分たちのまちは自分たちの手で守る」考えを持った世の中になるように「和をもって貴しとする」(聖徳太子制定の憲法一七条第一条の言葉)をモットーに、消防と住民が一体となって取り組み、災害のない、安心して豊かに暮らせるまちづくりを目指したいと力強く結ばれました。

(河原公一)

 

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