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ワンポイント

消防職員のための法令解説

 

地方分権一括法による地方自治法改正(二)

 

三、機関委任事務廃止に伴う事務区分の再編成

機関委任事務の廃止に伴い、従前の機関委任事務は、事務自体が廃止されるもの及び国の直接執行事務に移行するものを除き、自治事務と法定受託事務のどちらかに区分されることとなった。

自治事務は、普通地方公共団体(以下「地方公共団体」という)が処理する事務のうち、法定受託事務以外のものであって、(自治法二条八項)、地方公共団体本来の事務である。

これに対し、法定受託事務は、地方公共団体が処理する事務のうち、国等が本来果たすべき役割に係るものであって、国等において、その適正な処理を特に確保する必要があるものとして法律又はこれに基づく政令に定めるもの(自治法二条九項)である。

法定受託事務は、自治法の別表に明記されており、戸籍法に基づく戸籍事務等がこれに該当する。

消防関係では、機関委任事務であった危険物規制及び消防設備士に関する事務が、自治事務となった。

 

四、条例制定権

法定受託事務も、地方公共団体が処理する事務であるので、法令に違反しない限り、条例の制定は可能である(自治法一四条一項)。

このようなことから、地方公共団体の職員の政策立案能力が重要になり、条例を策定する職員の能力アップが必要となる。

また、地方公共団体は、義務を課し、又は権利を制限するには、法令に特別の定めがある場合を除き、条例によらなければならない(自治法一四条二項)。

 

五、地方公共団体に対する国の関与のあり方

(一) 包括的指揮監督権の廃止

旧自治法一五〇条、一五一条に定められていた機関委任事務に関する主務大臣及び知事の包括的指揮監督権が廃止された。

(二) 法定主義の明確化

国等が地方公共団体に関与を及ぼすような場合には、法律又はこれに基づく政令の根拠が必要となった(自治法二四五条の二)。

(三) 必要最小限の原則の明文化

国は、関与を設ける場合には、目的を達成するために必要な最小限度のものとするとともに、地方公共団体の自主性及び自立性に配慮しなければならない(自治法二四五条の三第一項)。

(四) 関与の基本類型の提示とそれ以外の関与の制限

自治事務と法定受託事務の区分に応じた関与の基本類型を、自治法は示し、それ以外の関与を設けることを制限している。

自治事務に関して、ア 基本的に、非権力的関与か事後的関与にとどめている イ 基本類型以外の関与については、同意、許可、認可、承認、指示は一定の場合に限定される ウ 代執行やその他の類型の関与はできる限り設けない

基本類型の関与としては、(ア) 助言、勧告 (イ) 資料の提出の要求 (ウ) 協議 (エ) 是正の要求がある(自治法二四五条の三等)。

(次号に続く)

全国消防長会

顧問弁護士 木下健治

 

 

 

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