今回は熊本県の山鹿鹿本広域行政事務組合消防本部を取材した。熊本は本年の消防救助技術大会が開催される地で、現在、県内の消防本部が協力して準備を進めている。同本部は、昭和四八年に発足し、山鹿市、鹿北町、菊鹿町、鹿本町、鹿央町、植木町の一市五町で構成されている。管内面積は三六五・四九km2で、熊本県の北部に位置し、福岡県・大分県と隣接している。
また、熊本市からバスで約一時間程のところにあり、県内でも有数の温泉地。泉質は弱アルカリ性、ラジウムを含み無色透明・無味無臭、柔らかい肌触りは乙女の柔肌にたとえられている。その他にも、色鮮やかに描かれた壁画をもつ装飾古墳群や日本最大の内戦といわれている西南の役で有名な田原坂など多数の史跡に恵まれ、スイカ・メロンなどの産地としても知られている。さらに八月に山鹿市で行われる山鹿灯籠まつりは、頭に金灯籠をのせて踊る、女性だけの祭りとしても有名だ。これら広大な管内を消防長以下八三人の消防職員と三、七四七人の消防団員で管轄している。
★救急告示病院との連携
同本部でも救急出場件数は年々増加している。高齢化や核家族化の影響のほかに消防広報の効果もあり、利用しやすい環境になったのではないかと分析している。同本部には、救急救命士が四人いて、特定行為の指示病院が今年度中に五か所に増加する。これは地元医師の協力によるものが大きい。地元医師との連携強化には、管内の救急告示病院の院長、婦長、医師会長、保健所長が出席する救急業務連絡協議会が利用された。年一回開催され、すでに一六回を数える。開催のきっかけは、いわゆる救急のたらいまわしについて話し合うものだった。お互いに意見をぶつけ合うことでいい信頼関係が生まれるようになり、現在では消防側の要望なども受け入れてもらいやすくなった。
★消防広報の充実
地域住民に消防を理解してもらうことが大切だとして消防広報の充実に力を入れている。広報誌の作成や消防フェスティバルの開催など地域住民を対象にした施策を実施している。マスコットキャラクターによる広報もその一つ。マスコット製作のきっかけは、災害などで近隣地域へ応援出場した場合、他隊との見分けがつくよう独自のワッペンを作ろうということになり、同本部の川口輝さんがデザインを担当した。名称は一般公募して「番火(ばんび)」に決定。火災予防運動期間中はもちろん、地域のイベントなどにも参加し、防火・防災意識の普及啓発、親しみ・信頼を持てる消防署づくりに貢献している。
★市町村部局との人事交流
昭和四八年に組合消防に移行した同本部では、この時職員を大量採用したため、年齢構成に均等を欠いていた。これを解消するため、市町村部局との人事交流を実施した。消防本部職員を市町村部局に受け入れてもらい、消防本部では新しい職員を採用する。異動職員は市町村部局の希望を聞き、職員の同意を得て実施した。働き盛りの職員が異動するため、消防本部の損失も大きいが、組織の活性化になったとのこと。また、異動した職員も異動先で管理職になるなど双方にメリットがあった。同本部では、高齢化対策にも有効ではないかと現在検討している。
★職員の力を伸ばすために
松本消防長にモットーなどについてお聞きすると、「最近は優秀な職員が増え、自ら研鑽している者が多い。自己主張はするが、他の者の意見も聞く。そういった職員の力を伸ばしてやるのが仕事だと考えている。時には厳しいことも言うが、頑張って欲しい。厳しい人員の中、職員の能力向上が不可欠だ。消防の仕事を積極的にアピールし、職員のやる気を側面から応援していきたい。」と語ってくれた。
(大橋実)