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バーチャルリアリティーによる火災調査の訓練

米国では各消防隊員の火災調査に関する知識に大きな差があることが明らかになったために、米国防火協会、米国消防局、アルコール・タバコ・火器局及び米国再保険会社が共同して各界の専門家を動員して二年間調査研究した結果、最近インターファイアVRと呼ばれるコンピューター火災調査訓練システムを開発した。バーチャルリアリティーによりいつどこでも発生するような住宅火災のシナリオを用いている。

インターファイアVRは、バーチャルリアリティーとマルチメディアの最新技術を使って標準のパソコンで稼働する。調査員は、実際に火災現場にいると同じように、火災建物内のどこにでも出入りしたり、建物周辺のどこにでも行って調査をしたり、証拠を収集し、写真を撮り、あるいは目撃者から事情を聴取することができる。

同システムには消防・警察の職員も参加しており、十二人のプロの俳優が隣人、建物の所有者、テナント、ジョギングの人等各種の役割を演じていて、これら多くの人々の中からうまく目撃者を見つけて事情聴取をしなければならない。火災調査は、火災現場だけでは終わらない。火災原因を確実に決定するためには引き続き多くのペーパーワークと記録の作業をすることが必要である。

その外に、全国の専門家から集めた、適切な事情聴取、証拠の収集、裁判における証言の方法等に関する豊富な資料を基に作成された教養がある。また、火災原因調査に関する米国防火協会の基準、専門書や消防雑誌の記事、論文の要約等の資料を参考にすることができる。

現在各消防局にとって大きな問題は、研修生を送り出すための費用ではなくてそれにかかる時間である。しかし、インターファイアVRを使えば、調査員は消防局にいながら実際と同じような火災原因調査の環境に入って最も高い知識を持った専門家達から訓練を受けることができる。調査員は研修所まで通うこともなく、消防局は調査員が研修を受けている間の貴重な時間を失うこともない。

調査の世界は常に変化をしている。インターファイアVRはCDをベースとしているが、ウェブサイトからも最新の情報を入手することができる。www.interfire.orgにアクセスすることによって他の調査員と連絡を取り合って質問をしたり、情報を交換したり、あるいは最新のデータについて検討することもできる。

米国消防局のブラウン局長によると、米国では焼死率が高すぎるが、インターファイアVRは焼死率を押さえるために官民が一体となって実現したもので、すでに効果を上げているという。米国防火協会のミラー会長も「火災調査はまだ新時代に入ったばかりであるが、このシステムは米国の人々の安全を高めることを約束するものである」と絶賛している。

(文責 大野春雄)

 

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