ワンポイント
消防職員のための法令解説
地方分権一括法による地方自治改正(一)
一 地方分権一括法の成立
地方分権推進法に基づき、地方分権推進委員会の勧告を受け、平成一〇年五月に地方分権推進計画が、平成一一年三月に第二次地方分権推進計画が、それぞれ閣議決定された。
これらの推進計画をうけて、平成一一年三月二六日、「地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律」以下(「地方分権一括法」と略す。)案が閣議決定されて、国会に提出され、平成一一年七月八日に成立し、平成一一年七月一六日公布された。
この地方分権一括法により、地方自治法(以下「自治法」と略す。)の大改正がなされた。
この自治法改正の大部分は、平成一二年四月一日から施行される。
二 自治法大改正の内容
自治法大改正は、多岐にわたるが、その主な改正点は、以下にのべるとおりである。(以下、改正後の条文を示す。)
(一) 国と地方公共団体の役割分担の明確化
自治法大改正は、国と地方公共団体の役割分担を明確化した。
即ち、地方公共団体の役割として、「地方公共団体は、住民の福祉の増進を図ることを基本として、地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を広く担うものとする。」(自治法一条の二第一項)とした。
そして、国は、国際社会における国家としての存立にかかわる事務、全国的に統一して定めることが望ましい国民の諸活動に関する事務、地方自治に関する基本的な準則に関する事務、全国的な規模で行わなければならない施策及び事業の実施、全国的な視点にたって行わなければならない施策及び事業の定義や、その他の国が本来果すべき役割を重点的に担うものとするとした(自治法一条の二第二項)。
そして、国の配慮として、国は、国が本来果たすべき役割を重点的に担い、住民に身近な行政はできる限り地方公共団体に委ねることを基本として、地方公共団体との間で、適切な役割を分担すべきこととした(自治法一条の二第二項)。
そして、国は、地方公共団体に関する制度の策定及び施策の実施に当たって、地方公共団体の自主性及び自律性が十分に発揮されるようにすべきであるとした(自治法一条の二第二項)。
(二) 機関委任事務制度の廃止
従前の中央集権型システムの中核を示していた機関委任事務は、分権型システムを推進するために廃止することとした。
機関委任事務は、知事や市町村長を国の下部機関として、国の事務を処理させる方式で、都道府県の事務の七割、市町村事務の三割を占め、そのため三割自治といわれていた。
今回の大改正で機関委任事務が廃止されたことに伴い、機関委任事務に関する大臣等の地方公共団体の長に対する指揮監督権を定めていた旧自治法一五〇条、一五一条は廃止となった。その他機関委任事務廃止に伴う条文の改正が行われた。
全国消防長会
顧問弁護士 木下健治