日本財団 図書館


中央手術室でストレッチャーから下ろされた青い命の箱は、待機していた医師たちの手に引き継がれ、その長旅を終えました。

そして、未明から続けられてきた我々の努力は、実に二〇時間を経過した後、使命の完遂を以てここに幕を下ろしたのです。

おわりに

臓器を提供された方の貴い遺志からスタートした命のリレー。その一翼を担った当局では、初めての臓器搬送に全力を傾注し、また臓器移植に関係された各分野の方々や市民の皆様の御協力を得て、その職責を果たすことができました。

各関係諸機関の連携協力体制がいかに重要な成果につながっていくかということを、改めて痛感した次第です。

本来、臓器の搬送は、臓器移植の一環として(社)日本臓器移植ネットワークが実施することとされています。しかし、臓器搬送には長距離搬送と緊急性という相反する厳しい条件が要求されることから、消防の特性である機動性をいかして協力することとなったものです。

今回の臓器搬送を通じて、人間の生命の尊厳が大きく問われている時代にあって、生命の尊厳に関する国民のニーズに積極的に協力していくことも貴い生命の保持に寄与することであり、ひいては、国民の生命・身体をあらゆる災害から守り抜くという消防・救急の使命につながるものであるとの認識を強めました。

当局にとりましても、緊張が連続する長い一日となりましたが、今回の一連の活動を検証し、次回につなげるとともに、今後とも関係各機関との連携を更に強化し、「貴い命のリレー」に協力していく体制の整備を積極的に進めていくこととしています。

時間経過

平成一一年六月一四日

〇:〇〇 (社)日本臓器移植ネットワーク近畿ブロックセンターから京都市消防局へ、摘出臓器の搬送依頼

〇:四五 京都市消防局臓器搬送検討委員会開催

一:三〇 臓器搬送受託決定

八:三〇 移植臓器搬送実施対策本部設置

一七:五〇 第一次出動指令(消防航空隊を伊丹空港へ)

一八:〇七 消防航空隊伊丹空港到着

一九:三〇 第二次出動指令(指揮隊・消防隊・救急隊を府警ヘリポート及び鴨川公園飛行場外離着陸場へ)

一九:五四 仙台空港からのチャーター機が伊丹空港到着

二〇:〇〇 消防航空隊が移植臓器を引き継ぎ、伊丹空港離陸

二〇:一六 消防航空隊府警ヘリポート到着

二〇:二一 救急隊に引き継ぎ、府警本部出発

二〇:二六 京大病院到着

 

005-1.gif

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION